「私たち編集部員は、ジャーナリスティックな目を持つ“テスター”として、入社以来、育てられてきました。会社の地下の倉庫には、テスト日誌がすべて残っていたんですよ。それらが商品テストを支える基礎だったのです」
スポンサーの圧力によってテスト結果をゆがめられないために、誌面に広告は掲載しなかった。テストに使う商品は正規の値段で買い、取材でメーカーに行く場合もお茶以外はごちそうにならない、という徹底ぶりだった。『とと姉ちゃん』では、製品を酷評されたメーカーが編集部に乗り込んでくる様子が描かれているが、実際に同じようなことはあったのだろうか。
小榑さんは「メーカーの社員が編集部に来ることはよくあったが、圧力をかけられることはなかった」と話す。
「テストするのはほとんどが大手企業の商品です。クレームではなく、“このテストはどうやってやったのですか。われわれも参考にしたい”と言ってくるんです。
そういうときは、こちらもテストの方法をすべて説明します。“そこまではできない”と言われ、こちらが“やるべきです”と返すなど、見解が割れることもよくありました」(小榑さん)
中小企業の製品の場合、テストの結果が悪いと、「つぶれてしまう」「大手メーカーと比べないでほしい」と言われることもあったが、消費者の暮らしを守るという編集方針を変えることはなかったという。
テストにあたってこだわったのは、普段私たちが使用するのと同じように、日常を再現することだった。専用の“実験室”をつくり、耐久性や性能などを徹底的に調べた。
「例えば電気プラグの試験をしたとき、われわれは何度もコンセントを抜き差ししました。メーカーのテストは機械で行うので、まっすぐにプラグを抜き差しします。
でも、人は少し斜めから差したり、見えにくいからうまく差せなかったりする。そのつど、差し方が違います。それを再現するのが商品テストの基本です」(小榑さん)
ドラマでは、トースターの商品試験で耐久性やパンの焼け具合を確かめるため、パンをひたすら焼くシーンが描かれたが、“リアル商品試験”でもトースターを扱っている。その数、4万3088枚! というから驚くばかり。
※女性セブン2016年9月22日号