スポーツ

広島・黒田博樹が男気の末に見せた涙をアメリカも賞賛

野球ファンのみならず多くの人を魅了

 他の誰も演じることのできないドラマ、だった。広島カープ25年ぶりのリーグ優勝に貢献したエースについて、MLBに詳しいスポーツジャーナリストの古内義明氏が述懐する。

 * * *
 何かを成し遂げた男の涙は、素敵すぎる。

 四半世紀ぶりのリーグ優勝が決まって、3塁側ベンチから一番最後に出てきた黒田博樹が、歓喜の輪に加わった。同じように古巣に戻ってきた新井貴浩と抱擁した瞬間から、黒田の涙が止まらなくなった。

 2006年シーズン最終戦。メジャーか、カープ残留か、で揺れ動く黒田に対して、広島市民球場のライトスタンドに上がった横断幕にはこう書かれていた。

「我々は共に闘ってきた 今までもこれからも・・・ 未来へ輝くその日まで 君が涙を流すなら 君の涙になってやる カープのエース 黒田博樹」

 メジャーでは西のドジャース、東のヤンキースという名門球団で投げた。勝利に飢えたファン、そして辛辣なメディアが手ぐすねを引いて待っていたが、黒田の安定した働きぶりはすぐに彼らの心をつかんだ。それは工場で黙々と働く労働者にたとえて、「まるでブルーカラーのような働きぶり」と評価された。大金をもらい、成績も残さず、文句ばかり言う選手とは正反対の準備を怠らないベテランの姿勢は首脳陣から「お手本」として受け入れられた。

 メジャー最終年。7年間で白星を79勝も積み重ねた男の評価はうなぎ登りだった。メジャーの晩年は、オフに1年契約を結び、「いつ辞めてもいい」を繰り返す完全燃焼スタイルを貫いていた。

 ヤンキースから再契約を熱望され、パドレスからは1800万ドル(約21億円)もの巨額オファーが提示された。お金か、それとも、生き様か。プロであれば、揺れ動いて当然。この答えに、正解はない。

 毎年シーズンオフになると、巨額なマネーが飛び交うメジャーのストーブリーグで、自分に対する正当な評価、つまり、より高額な年俸を選ぶのは当たり前のセオリーだ。だから、5分の1以下の年俸提示を選んだ黒田の決断は、「unbelievable!(あり得ない!)」と、メジャー関係者から驚きの声をもって受け取られた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト