候補があまりに低レベルになったことで、アメリカ大統領選は混迷の一途を辿っている。ここまで来ると、場合によっては将来、アメリカの政治制度が激変し、大統領制を放棄する可能性さえあるだろう。議会から「首相」を選んだほうがマシ、という議論が出てきてもおかしくないのだ。
私の人生は、アメリカに与えられたと言ってもいい。だから、「強く、美しいアメリカ」に復活して欲しいと考えている。しかし、今のままでは無理だ。
外交的リーダーシップの欠如に加え、経済面でも世界を牽引するだけの力はなくなっている。現状のアメリカ経済は好調だという者もいるが、オバマが18兆ドルまで膨らませた借金は、アメリカ国民に今後のしかかってくる。
そんなアメリカのことを、日本は笑っていられない。たとえば北朝鮮が秋田沖にミサイルを撃ち込んだことに対しても、日本はバカの一つ覚えのように「厳重に抗議する」「許しがたい暴挙」と繰り返すばかりだ。北朝鮮に対して、実効性のある対抗策を考えることもしない。日本も、引きこもりになっているのだ。
このままでは、国が危機に陥る。私は、そうした強い懸念を持って、『そして、アメリカは消える』を書き上げた。私は、若い人にも今回の本を読んで欲しいと思う。
第一部には、かつての強く、美しいアメリカの姿を記した。そうした時代があったことを知らなければ、「強い国」とはどういうものなのか、わからないからだ。教養と素養がある国民、リーダーシップを持つ指導者とはどのような存在なのか、本書から読み取って欲しい。
歴史を知ることこそ、教養につながり、次の時代を作っていくことにつながる。心ある人々が、強い日本を築いていくことを切に願う。
※SAPIO2016年10月号