国内

北方領土問題 米大統領交代の権力空白タイミングを見計らう

北方領土問題の進展はあるのか

 臨時国会が始まったばかりの永田町では突風のような「解散風」が吹き始めた──。きっかけは日経新聞の〈来年1月解散説 永田町に浮上〉(9月17日付朝刊)記事だった。

 麻生太郎・副総理が派内に「理論上は1月解散はありうる。しっかり準備しておけ」と指示を出しており、安倍首相は12月の日ロ首脳会談で〈北方領土問題を前進させる政治決断を下し、その信を国民に問う──との観測だ〉という内容だ。

 もちろん、解散には大義名分が必要になる。その点について安倍首相は山口での講演で興味深い発言をしている。

「岸信介回顧録を久々に読んだ。維新を成し遂げた山口県出身の首相として恥ずかしくない実績を残していきたいと静かに決意している」

 安倍氏の祖父・岸元首相が残した大きな外交課題が北方領土問題だ。

 北方領土は国後、択捉、歯舞(諸島)、色丹の4島。鳩山一郎内閣時代の「日ソ共同宣言」(1956年)で両国は平和条約締結後、旧ソ連が歯舞、色丹の2島を返還することで合意した。ところが、その後の岸内閣が日米安保条約を改定すると、反発した旧ソ連は返還を事実上撤回。以後、首相の父・安倍晋太郎元外相などが中心になって幾度も交渉が行なわれてきたが、解決に至っていない。

 祖父と父の積み残した領土問題の決着に意欲を燃やす安倍首相は、プーチン大統領と14回会談を重ねた。今年に入ると2回もロシアを訪問し、経済協力と引き替えに領土返還を求める「新たなアプローチ」を提案。12月に地元・下関で行なわれる日ロ首脳会談はいよいよ交渉の総仕上げになる。

 領土交渉の進展は望ましいところだが、問題はこれまで「4島一括返還」を唱えてきた安倍首相が、外交的功名心から方針を転換し、プーチン大統領に歯舞、色丹の「2島先行返還」で譲歩しようとしていると見られていることだ。外務省関係者が明かす。

「新たなアプローチとは4島ではなく2島先行返還のこと。安倍総理は日ロ首脳会談の会場にわざわざ下関の料亭旅館・春帆楼を選んだ。日清戦争勝利後に伊藤博文と李鴻章の講和会議が行なわれ、遼東半島と台湾を割譲させた歴史的舞台だ。

 総理はここでプーチン大統領と歯舞、色丹の2島返還と平和条約締結合意の感触をつかんでいる。12月という首脳会談の日程も、日ロ接近を嫌う米国に横槍を入れられないように、大統領交代による権力空白のタイミング(11月8日に選出される新大統領の就任は来年1月20日)を見計らったものです」

※週刊ポスト2016年10月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン