「Bさんのマンションは価値を下げやすい物件の典型です」と話すのは、『マンション格差』の著者で、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。

「まず、Bさんのケースは『駅まで歩いて11分』というのが最も値段を下げています。東京や大阪など、車よりも電車を使う大都市の場合には駅まで徒歩5~10分でないと値段が下がりやすい。というのも、ネットの中古物件サイトなどでは検索条件が『5分以内』『10分以内』と5分刻みなので、徒歩11分だと『15分以内』に入ってしまい、参照される率が大幅に下がって買い手が付かなくなり値が下がるのです」

 どの鉄道の沿線かによって差が出ることもある。

「Bさんの物件の場合、東京駅まで2度乗り換えるため、新幹線を利用する機会の多い出張族ビジネスマンに避けられる。最寄り駅がJR東海道本線や京浜東北線など大都市に繋がっている路線の駅なら、遠くても価格は安定したでしょう」(同前)

 Bさんの場合は郊外のニュータウンのマンションだったことも逆風だった。

「日本の人口が減少しているせいで、都心部に住める人が増えた。実際、廃墟化しつつあるニュータウンは数多くあり、値は下がっている」(同前)

「立地」の評価は「最寄り駅への近さ」や「ターミナル駅へのアクセス」のみでは決まらない。マンション周辺にどんな施設があるかも重要だ。

「名門小学校の近くは、塾などが充実していてブランド化している。たとえば、お茶の水女子大にほど近い東京都文京区の名門区立小・窪町小学校の学区は人気が高く、評価額が周囲より1割アップします。裏を返せば、道を一本隔ててこの学区から外れてしまうと、立地がほとんど変わらないにもかかわらず評価額が1割低くなってしまうのです」(同前)

 近年はタワーマンションに住むことが一種のステータスになりつつあるが、ここにも注意点がある。

「同じマンション内でも、眺望が良いほうが好まれるため、新築時の価格は1階高くなると50万~100万円上がるといわれています。超高層マンションで眺望が売りなら話は別ですが、10階程度のマンションなら年月が経つと眺望は重視されなくなり、結果的に低層階のマンションの方が値下がり率が低くなる」(同前)

 まだある。Bさんのケースのように有名デベロッパーが手がけた場合には、エントランスなどを豪華にして1割程度付加価値を付ける場合が多く、10年以上経つと値下がりすることが少なくない。

 つまりBさんのマンションは下がるべくして下がったというわけである。

※週刊ポスト2016年10月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン