皇室に対する姿勢も言葉によく表れている。一般紙で「天皇陛下」と表現するところは「天皇」とし、敬語も原則使わない。先月、話題となった天皇陛下のお気持ち表明も、《天皇は8日、「象徴としてのお務めについて」とする発言を、ビデオメッセージの形で発表しました》(8月9日付)といった文章になる。
一般の刑事事件報道では加害者でも匿名となる。「建設業の男性」「21歳女性」といった表現が用いられる。被害者、加害者のプライバシー、人権に配慮しているのだ。
しかし一般紙の場合、多くの場合で警察発表に基づいて実名、匿名を使い分ける傾向が強い。つまり、「警察の判断」でやっている。それへのアンチテーゼとして実名・匿名を判断していると言える。この点、一般紙よりも筋が通っている。
ただし、公人の刑事事件は実名で報じる。汚職など公人の刑事事件は地位を利用したものであり、公権力のチェック・監視という観点から、当然、実名になる。公人であれば、一般刑事事件でも(たとえば痴漢など)実名報道になる可能性が高い。
また、詐欺事件の場合は、公人でなくても実名報道となる。二次被害の可能性があり、容疑者を特定する必要があるとの考えからだ。
このように一定の基準があるが、明文化されたルールではなく、ケース・バイ・ケースで判断される。
赤旗・共産党の女性、子供に対する考え方がわかる表現もある。赤旗では「子供」「子ども」「こども」のうち、「子ども」を使用する。
《子どもは、戦前のように、おとなの「お供」でも、神仏の「お供え」でもない、人権をもった人間だ》(同前)という考えによる。
また、「夫人」は使わず「妻」を使う。夫婦はそれぞれ別個の人格だからだ。
※SAPIO2016年10月号