「例えばアメリカの動物園は、非営利法人が運営していることが多く、助成金と寄付金で成り立っている動物園がほとんどです。限られた予算のなかで計画を立てるのではなく、市から助成金をもらいながら “次にこんないい施設を作ります”とアピールして一般から寄付を募ります。その分、出資している人の目も厳しくなり、理想の高い計画を立てることになります。
実際、スイスのチューリッヒ動物園では、65億円もの寄付金を集めて巨大なゾウの展示施設を作りました。屋外はもちろん、ドームの内に複数の運動場があり、寒い冬の間は屋内だけで充分に過ごせます。寄付をもらう時は『動物のために使う』と約束しているそうです」(佐渡友さん)
動物を養うことはきれい事ばかりではない。金と労力がすべてといっても過言ではない。例えば、動物園のスター動物、ゾウ1頭を新しく連れてくるには3000万円。キリンは1700万円だ。さらに養うとなると、食費だけでゾウは年間400万円、キリンは80万円必要になる。
加えて動物の高齢化も深刻化している。戦後日本にやって来たゾウのはな子は今年5月に亡くなった。人間同士の介護でさえ、時に死を選ぶほど大変なのだから、老いた動物の世話に、どれほどの金と労力がかかるか想像にかたくないことだろう。
そう思ってもう一度、あなたの住まいの近くにある動物園の入園料を考えてほしい。いかに安く動物たちと触れ合っているか──。
映画でも『ズートピア』『ジャングル・ブック』など“動物もの”は今も老若男女から人気を誇っている。そんな動物たちとリアルに触れ合える動物園は貴重な場所だが、このままだとなくなってしまう可能性もある。私たちが動物とそれを支える飼育員の人たちの大変さやそのコストについて、一度でも思いを致したことがあっただろうか。今まさに転換期にある動物園。その変わりゆく様を、私たちは受け入れて、動物たちを守っていきたい。明日も動物園を楽しむために。
※女性セブン2016年10月13日号