◆「誘拐」で訴えると姉の友達を脅す父
姉が大学生になると、父の一方的な虐待ではなく、獣同士の殺し合いのようになった。ある日、父が「そんなにおれの言うことが聞けないなら出て行け!」と叫び、姉は「はい」と小さな返事を残して、玄関の向こうへ消えた。
幼い私にも姉の行動が当然に見えた。母が慌てて姉を追いかけ、しばらくして「追いつけなかった」と戻ってきた。父は「ふんっ、どうせすぐに帰ってくるよ」と言い、ぷいと外に出て行った。その後、姉の血痕が点々とついた茶の間の畳を、いつものように母と私で拭き取った。
2日経ち、3日経ち、父の顔色が変わりだし、警察に捜索願いを出した。1週間後、今度は姉の友達たちに電話をかけまくった。電話だけではない。「誘拐」「刑事告訴」と脅し文句をちらつかせながら、訪ね歩いていたのだ。
「18才の娘の友達に、50男がすること?」と母は呆れたが、生さぬ仲の娘との関係に口をはさむと、父は「お前は黙ってろ」といつも母を殴った。結局、母が間に入って、姉は家を出て、ひとり暮らしを始めた。
(つづく)
※女性セブン2016年10月20日号