2016年は大手証券会社や大物アナリストたちが当初の予測を“下方修正”する弱気な見通しが相次いでいた。だが、10月に入って、その潮目が変わりつつある。株のプロたちが「株価は上昇する」と揃って言い始めたのだ。
年初から低迷が続いていた株式市場に浮上の兆しが見え始めている。10月11日、日経平均株価は1か月ぶりに1万7000円台を回復した。これは長く続いた停滞市場の一時的な反発ではない。その証拠に、株のプロたちが一足早く株価予測の“上方修正”をしているのだ。
口火を切ったのは、証券業界最大手の野村證券だ。9月26日に公表したレポート『マーケットアウトルック』には同社のアナリストたちが協議した結果として、以下の見解が示された。
〈日本株は上昇基調へ転ずることが予想されます。2016年末の日経平均株価予想を18000円と想定します〉
一時は株価1万5000円を割り込み、悲観論すら漂った日本株が「復活」するという宣言だ。さらに野村證券投資情報部のトップを務める竜沢俊彦部長は、「個人的見解ですが」と断わった上で、こう強調した。
「年末に株価1万9000円をつける可能性まで十分あります。このトレンドが続けば、2017年には2万円超えもあると見ています」
野村だけではない。SMBC日興証券のアナリストも「年末には1万9000円」と主張している。その他の有名アナリストからも「来年は2万円だ」「いや、2万2000円だ」と強気の予測が飛び出している。株のプロたちはなぜ、「攻め」の予想に転じたのか―。
「これまで日本経済を低迷させていた『ABCDショック』の危機が去りつつあり、株価が反転攻勢の時期を迎えている」
そう語るのは、経済評論家の杉村富生氏だ。
「ABCDショック」とは、「A」がアメリカの大統領選挙、「B」が英国のEU離脱、「C」が中国経済失速、「D」がドイツ銀行を中心とする欧州系金融機関の経営危機を指す。
前出の竜沢氏は、これらの懸念を「お化け」と呼ぶ。本来は存在しないリスクかもしれないのに、「出るぞ、出るぞ」という不安な心理が働いて、株価を押し下げる要因になるという意味である。
これらの懸念が解消されそうであることが株価予測の“上方修正”の大きな要因になっている。以下、野村證券の見解を詳しく見ていく。