『IQ246~華麗なる事件簿~』(TBS系)では、法門寺沙羅駆(織田裕二)と執事・賢正(ディーン・フジオカ)が住む法門寺家に、護衛という形で刑事・和藤奏子(土屋太鳳)が同居。しかし、本当の役割は、沙羅駆が事件に手を出さないようにするための監視であり、奏子は目を光らせている……と思いきや「沙羅駆に都合よく使われているだけ」というオチがあります。
広義では、三田園薫(松岡昌宏)が派遣先(各話ゲスト)の家に入り込む『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)、タワーマンションに住む主婦たちのドロドロとした関係を描いた『砂の塔~知りすぎた隣人~』も、ひとつ屋根の下の“準同居”と言っていい気がします。この2作は、タイトでシリアスな人間関係を描くために、同居という設定を採り入れたのでしょう。
いずれの作品も、普通のカップルやパートナーではない“ワケアリ同居”だけに、その毎日は違和感の連続。想定外のことに主人公がドキドキする姿はほほ笑ましく、うろたえる姿に大笑いするなど、視聴者を笑顔にさせるシーンが多く好印象を抱きやすいのです。
また、同居という設定は、「キャラクターのオフ姿を見せる」のも狙いの1つ。視聴者に「無防備な表情や部屋着姿を見せて親近感を抱かせる」効果がありますし、仕事中のオンとのギャップも魅力になります。
たとえば『逃げ恥』では、「独身のプロ」を公言し、一切笑わない仕事人間の津崎が、パジャマ姿で好物のアイスを食べて小さく笑うシーンは、キャラクターの魅力をグッと引き上げました。他の作品も、これから“ワケアリ同居”という設定を生かしたシーンがあるでしょうし、ハグやキスなどのスキンシップが見られるかもしれません。
近い距離感だからこそ起きるドキドキとトホホ、ラブラブとケンカ。今秋は“ワケアリ同居”で生まれる人間らしい喜怒哀楽に、ぜひ注目してみてください。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。