国内

卵子凍結の出産率は採卵時30才で11.3%

大阪市にあるオーク住吉産婦人科船曳美也子さん

 マイナス196℃の液体窒素が入ったタンク。そこには凍結した卵子が入っている…。

 10月26日に『クローズアップ現代+』(NHK)で『老化を止める?“卵子凍結”の真実』と題した番組が放送された。その冒頭で、驚くべき調査結果が示された。

 NHKが全国の高度な不妊治療を行う医療機関を対象に独自の調査を行ったところ、40以上の医療機関でおよそ1000人の女性が卵子凍結を行っていることが明らかになったのである。卵子の数の合計はおよそ9000個。これだけの数の“命のもと”が、いつか来る出番を静かに待っている。

 同番組では、そうしたNHK独自の調査結果とともに、凍結した卵子を用いていつの日か出産したいと望む女性たちの“今”について特集し、大きな反響を呼んだ。同番組のディレクター・丸岡裕幸さんはこう語る。

「これほど多くの女性が卵子凍結を行っているということにまず驚きました。ある程度の数はあるだろうと思っていましたが、その予想を大きく超えていました」

 これまでその実態が全くわかっていなかった「健康な女性で凍結卵子を使った出産経験者」がすでに10人以上いることも同番組で明らかになった。それは凍結した卵子を解凍して体外受精による妊娠を試みた女性およそ90人中、出産にまで至った人の数だ。

「この数字は、卵子凍結が将来の出産を約束するものではないことを示しています。卵子を凍結さえすれば、出産までの時間が猶予されると考えるかたもいますが、現実には必ずしもそうではなかったことがわかりました」(丸岡さん)

 40代で卵子凍結を行う女性も多いが、妊娠・出産に至るのは決して簡単ではないのが現実だ。大阪市にあるオーク住吉産婦人科船曳美也子さんはこう語る。

「出産率は年齢とともに下がっていきます。1個の凍結卵子による出産率は、採卵時の年齢が30才で11.3%、35才では8.3%。40才で6%です」(船曳さん)

 同院では、卵子の解凍をした12例のうち、妊娠したのは6例で、そのうち出産にまで至ったのはわずか2例だけだ(他2例は現在、妊娠中、他2例は妊娠したが初期流産)。

 妊娠にまでこぎ着けたとしても、高齢出産のリスクは消えない。日本生殖医学会が、ガイドラインで《40才以上の卵子の採取は推奨できない》《保存卵子を使った45才以上の不妊治療は推奨できない》としているのはこのためだ。

 ガイドラインの作成にかかわった元日本生殖医学会理事長で、慶應義塾大学名誉教授の吉村泰典さんが語る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン