とはいえ、喫煙者と非喫煙者のさらなる「共生」を目指す千代田区にとって、残された課題も少なくない。そのひとつが、身近な喫煙場所の整備である。多くの喫煙者が不満を漏らすように、吸える場所がなければ路上喫煙の取り締まりも“イタチごっこ”になりかねないからだ。
区では屋内喫煙所の設置にかかる工事費に500万円、維持管理費用に年額240万円まで助成する制度を独自に設けているが、現状では公園や公共施設など公設喫煙所とあわせても48か所にとどまっている。
「もともと千代田区内には誰でも吸える喫煙所が少なかったうえ、当初、助成制度で定めていた5坪以上のスペースを確保できる場所も限られていたため、なかなか助成金の活用が進みませんでした。そこで、今では2坪以上に要件を緩和して、小規模な喫煙所を街中の導線に数多く設置する施策を行なっています」(前出・小山氏)
「千代田区第3次基本計画2015(ちよだみらいプロジェクト)」でも、2024年までに100か所の喫煙所を設置し、路上喫煙の過料件数を3000件にまで減らす目標数値をはっきりと掲げている。
冒頭に紹介した書籍『路上喫煙にNo!』は、こう結ばれている。
〈「マナーからルールへ。」と止むを得ず生まれた罰則規定。これが罰則などいらない「ルールから、マナーへ。」となる日を目指して……〉
折しも、厚生労働省では「屋内全面禁煙化」に向けた規制強化とも取れる罰則付きの受動喫煙防止対策案を発表し、法制化に向けた議論が始まろうとしている。この期に及んで、わざわざルールを厳格にしなければ喫煙者のマナーは守れないのか。14年間に及ぶ千代田区の実績と波及効果について、改めて検証してみる必要があるだろう。