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「年金計算ミス報道」に厚労省が反論も矛盾点アリ

年金減額で国相手の訴訟も

「年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準の確保を図る」──11月2日の衆院本会議で塩崎恭久・厚生労働相はそう語り、現在年金をもらっている高齢者の受給額引き下げを可能にする「年金減額法案」が審議入りした。

 その前日、厚労省年金局から本誌・週刊ポスト前号記事に対する抗議文が届いた。前号では、年金計算のコンピューターには、同じ給料でも、「64歳11か月」で会社を退職した人の厚生年金の支給額が、「64歳10か月」で退職(保険料支払いは1か月少ない)した人より減額されるという問題が隠されていたことを報じた。

 年金受給者が年金事務所のオンラインで算定された年金見込額と、年金コンピューターが出した厚労大臣名の年金決定額が違うことから“プログラム・ミス”に気づいて説明を求めたところ、厚労省・日本年金機構は法令の解釈を変えて「大臣決定額が正しい」と主張した。

 納得できない受給者が提訴し、東京地裁は〈不合理な法解釈により不利益が生じるのは、その額の大小にかかわらず看過できない〉と判決、国は敗訴し、昨年9月、東京高裁も1審判決を支持した。

 これを報じた本誌に、厚労省はこう反論してきた。

〈年金給付システムは、法令解釈に基づき正しい年金額を計算しています。したがって、記事中、「厚労大臣の年金決定額が間違っていた」「年金額を正しく計算していたオンラインのシステムを、年金コンピューターの間違った計算式に合わせる」等とあるのは、事実誤認であり、誤った情報を伝えるものです〉

 そのうえで同様の減額ケースが争われた2つの訴訟のうち、1つは最高裁で国が勝訴していることを取り上げて、一方の地裁・高裁判決のみ説明するのは〈誤った情報を伝えるもの〉と反論するのだ。

 この「64歳11か月の退職者の年金減額」は一見、特殊なケースのように見えるが、本質は年金制度の根幹に関わる疑惑である。

 厚生年金は平均給与(標準報酬月額)で決まる保険料が同じであれば、加入期間(保険料支払い期間)が長いほど多くの年金がもらえる制度だと国は説明してきた。ところが、厚労省の年金計算式では、給料は同じでも加入期間が長い人の年金額が少なくなるという逆転現象が起きている。

 なぜ加入期間が長い人の方が年金減額されるのか。厚労省がそれを「正しい年金額」というのであれば、その理由を合理的に説明しなければ国民は年金制度を信用できない。

※週刊ポスト2016年11月18日号

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