1963年に挙式した信孝さんと八重子さん


◆幼子(おさなご)に帰りし妻の 手をとりて 今も変わらじ 若き日のぬくもり

 日々刻々進行していく八重子さんの病気。会話が成り立たなくなり、字が書けなくなり、衣服の着脱も食事も介助なしでは難しくなっていったが、陽さんは「八重子さんをどこにも預けないで家で看る」と決めた。

 そんなある雪の夜、陽さんが帰宅すると、自宅近くの橋の上にぼーっと白い影が浮かんでいた。急いで駆け寄ると、降りしきる雪の中、八重子さんが雪だるまのようになって泣きじゃくっていた。彼女は、そこで、ずっと夫の帰りを待っていたのだ。

「抱きかかえるようにして家へ連れて帰り、妻を寝かしつけると、涙があとからあとからこみ上げてきて…」

 陽さんはこの出来事をきっかけに、任期半ばで教育長の職を辞し、妻の介護に専念する。1998年のことだった。

「いずれ短い命なら、一緒にいてやりたくてね。飲み会にも連れて行って左に座らせて食べさせる。2次会のカラオケも一緒でした。介護を始めてからは、全国の介護施設とかで講演を頼まれることも多いんですけどね、そういう場所にも全部連れて行った」

 在りし日に思いを馳せ目を細める陽さんは、穏やかな表情だったが、日々の生活は修羅場だった。

「女房を連れて歩くことに、娘は泣きながら反対していました…。近所の人も、おそらく、100人が100人、“ボケた奧さんを連れて歩かんでも、施設に入れてあげたらいいのに”って思っていたんじゃないかな。実際直接、わしに言ってきた人もおったし、つらかったですよ」(陽さん)

 想像してほしい。それは今から20年以上前のこと。認知症という言葉はまだなく、まして若年性アルツハイマーに対する知識も理解もなかった時代だ。今でさえ、老いた親が認知症であることを公表することは抵抗がある。

 2009年、長門裕之さん(享年77)が、認知症になった妻・南田洋子さん(享年76)を老老介護する日々を明かした時、勇気ある行動だと賞讃される一方で「あんなにきれいだった女優の壊れた姿をテレビの前に連れ出すなんてひどすぎる」「妻をさらし者にしているだけだ」などと批判され、実際長門さんは、南田さんの親戚からも非難された。

 2013年には寿美花代(84才)が、テレビ番組で夫・高島忠夫(86才)を老老介護している日々を公開したが、これにも波紋が広がった。

「だけどわしは、どこに行くにも一緒にいてやりたいし、もう隠して生きていく時代じゃないと思っとった。それで家族には悲しい思いをさせたけど、わしが決断しなければ家族が迷う。そして家族が迷うってことは、女房がいちばんかわいそうな思いをするってことやと思った」(陽さん)

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