ライフ

自分で自分について語り再生を試みるナラティブセラピー

 手紙や日記など、書くことによって得られるものがある。届いた手紙がきっかけで始まる映画と、自分で自分の人生を語りながら、自らを再生するナラティブセラピーについて、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が語る。

 * * *
 ぼくは映画大好き人間。コメンテーターをしている日テレの「news every.」で3か月に1回くらい、オススメ映画コーナーを持っている。年間10本は新聞に映画のコメントを出している。

 このところ映画界が元気だ。「シン・ゴジラ」はたくさんのお客を集めた。「鎌田さん、みた?」と何人もの人に聞かれた。「単なる特撮映画じゃない」「みたらいい、絶対に好きだよ」

 興行収入170億円を超えたという「君の名は。」は、もっとたくさんの人にすすめられた。ヒットしている映画より、スポットライトがあたってないが、輝いている映画をみつけるのが好き。偏屈なんだ。そんなぼくがこの秋みた映画は、なぜか、手紙が重要なモチーフになった作品が多かった。

 その一つが「手紙は憶えている」だ。主人公は、90歳。寝るたびに記憶が薄れていく認知症の老人だ。奥さんが亡くなったことも、覚えていない。そんな彼に友人から一通の手紙が届く。「覚えているかい。奥さんが亡くなったら、君が復讐することを誓ったことを。忘れても大丈夫なように、すべてを手紙に書いた」

 手紙の送り主と主人公は、アウシュビッツで、家族を殺された。収容所の責任者が名前を変えて今も生きている、捜し出して復讐せよ、というものだった。

 90歳の老人が銃を買い、4人の容疑者のもとへと旅を続ける。失っていく記憶と、決して消すことができない記憶。信じられるのは手紙だけ。最後の5分間、衝撃の結末を迎える。人間が抱える秘密に迫るような迫力あるサスペンスだ。

 ナラティブテラピーという心理療法がある。自分で自分の人生を語りながら、問題点を見つけたり、過去の物語をとらえ直したりすることで、自らを再生していこうというものだ。「ナラティブ」とは「語り」という意味だ。

 手紙も、自分のなかにある思いを何度も反芻し、言語化するという点で、ナラティブテラピーの一つだ。

 2年ほど前、広島に住む28歳のNさんから手紙をもらった。面識はなかったが、ぼくの本を読んだり、講演に来てくれたことがあるという。その手紙には、肺がんのため37歳で2か月前に他界した夫の、4年間の闘病とそれを支える彼女の思いが綴られていた。

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン