◆市長宛てに「恥ずかしい」と強い抗議
改めて、プレート設置の経緯を知るため、熱海市の担当部署を訪ねた。
「数年前からメールや手紙で『(貫一お宮の像が)女性への暴力を容認していると誤解を招くのでは』といったご意見が複数寄せられ、市議会議員からも外国人観光客への対応について指摘されました。
そうした中に、ある女性の大学教授から市長宛ての強い抗議のメールがあった。『こんな像があったら、恥ずかしくて熱海には外国からのお客様を連れて行けない』という内容で、それが直接のきっかけになったと思います。そうは言っても像は熱海の財産で、市民も慣れ親しんでいる。撤去するとなれば別の大きな問題になります。説明のプレートを設けるのが、市ができるギリギリのラインでした」(都市整備課公園緑地室)
熱海市では毎年、貫一が涙で月を曇らせる“今月今夜”の1月17日に、原作者の尾崎紅葉を偲ぶ「紅葉祭」を開催し、熱海芸妓組合の芸者らが名場面の寸劇を披露しているという。多くの熱海市民は『金色夜叉』の舞台であることを誇りに思っているのだ。
熱海市の担当者によれば、女性蔑視の像だと抗議をしてきたのはみな日本人で、外国人からの抗議はこれまで1件もないという。
貫一お宮の像の観光ガイドで、毎日のように外国人観光客と接している観光ボランティアの田中明博氏に外国人の反応を聞いた。
「像に立ち寄る外国人観光客は台湾や中国からのお客さんがほとんどです。像の説明をすると皆さん納得されますし、ポーズを真似て記念写真を撮ることも多い。カップルの場合、だいたい8割は女性が男性を足蹴にしています(笑)。問題視した人は今まで誰もいません。(プレート設置を取り上げた)番組は見ていませんが、実情も知らずに無責任なことを言っていたんじゃないでしょうか」
「外国人ならこう思うに違いない」と勝手に忖度した日本人が騒ぐという、よくある構図が透けて見える。