ビジネス

キリン新戦略 「47都道府県の一番搾り」で身近なビール屋へ

キリンビールの細分化戦略(左・布施孝之社長)

「ビール市場は今年も10月まで微減(対前年比)で、おそらく年間着地もプラスにならないだろう。このままいくと12年連続でパイが小さくなる。何とかビールカテゴリーそのものの魅力を高めていかなければ……」

 若者のビール離れも鮮明になる中、こう苦しい胸の内を明かすのは、キリンビール社長の布施孝之社長だ。

 特にキリンにとって「ビール復権」は喫緊の課題ともいえる。なぜなら、今年1~6月のビール類シェア(ビール、発泡酒、新ジャンルを合わせた課税出荷数量比)で大手5社中、唯一の“独り負け”。不動の2位とはいえ、王者ブランド『スーパードライ』を有するアサヒビールに差を広げられてしまったからだ。

 だが、その一方で「やみくもなシェア争いを続けていても業界全体がつまらなくなる一方で、ワクワクするビールの未来は創れない」(布施社長)との思いも強い。

 そこでキリンは今年からリスクを覚悟で思い切った策を打ち出し、確かな手応えも掴み出している。

 年間3470万ケース(1ケースは大瓶20本換算)を出荷する主力ブランド『一番搾り』の味を47都道府県の風土や食文化に合わせてすべて変えた“ご当地一番搾り”を発売したのはその一例だ。

「『広島づくり』なら、オタフクソースや広島電鉄の社長さん、カープ女子会のリーダーなど地元の人たちにワークショップに参加していただき、商品コンセプトを決めて味づくりに反映させました。

 単なる地域限定ビールではなく、その地域で暮らすお客様と一緒になって、魅力を発掘しながらつくり出していく。この『共創』こそ、キリンが目指す新しいビール文化の形です」(布施社長)

 もちろん、スタンダードな一番搾りとは別に、全国9工場で原材料や製造工程を微妙に変えた47商品をつくるのはコスト的にも大きな賭けだったというが、その分見返りも大きかった。

 47都道府県の一番搾りは、当初120万ケースの出荷目標は倍以上の260万ケースに上方修正するほどの売れ行きとなり、地方の商品欲しさに「あちこち旅行して購入しているという消費者までいた」(キリン幹部)という。

関連キーワード

トピックス

司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
横山剣氏(左)と作曲家・村井邦彦氏のスペシャル対談
《スペシャル対談・横山剣×村井邦彦》「荒井由実との出会い」「名盤『ひこうき雲』で起きた奇跡的な偶然」…現代日本音楽史のVIPが明かす至極のエピソード
週刊ポスト
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン