◆散骨もしてくれる
近年は、墓じまいをした後、遺骨を別の場所に買った墓に移すのではなく、永代供養墓などに回したいという声も増えている。
「他の方の遺骨と一緒に合祀し、墓参りに来る人がいなくなっても寺が責任を持って永代にわたって供養していくというのが永代供養墓です」(首都圏にある霊園関係者)
そうしたニーズにも応えるべく、「お墓のお引越し」のサービスでは、「プラス5万5000円」で永代供養墓に遺骨を入れてもらえる「永代供養プラン」や「海洋散骨プラン」なども用意されている。
故人への弔いの費用を「定額プラン」にするという動きは業界内に波紋を広げそうだ。関西地方の寺院の住職はこう漏らす。
「我々としても檀家がどんどん少なくなるという問題に直面して頭を抱えている。無縁墓(誰も墓参りに来なくなった墓)が増えて、それを維持・管理するにも費用がかかる。離檀料の交渉にあたっては、“高ければ改葬を思い止まってくれるのではないか”という寺院側の気持ちも込められている。単に吹っかけていると思われるのは残念だ」
檀家と菩提寺の関係を一変させそうな“価格破壊”の潮流について、葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏は、「最初から代行に頼るのが必ずしもいいとは思わない」と指摘する。
「お墓を更地にするには1平方メートルにつき8万~15万円、書類の手続きは行政書士を使えば4万~5万円といわれていますから、今回の新サービスの24万9000円という価格設定は妥当だと思います。ただ、いきなりサービスを利用するよりは、この額を『相場』と認識した上で、まずは自分で交渉にあたるのがいいように思います。
菩提寺は家族に代わって長くお墓を守ってくれたわけですから、代理人を立てて“はい、サヨナラ”ではお互いに気持ちよくないでしょう。これまでの感謝の意味を込めて自分で挨拶に行くのが基本ではないでしょうか。もちろん、交渉がこじれた時は代行サービスを利用していいと思います」
これまでわからなかった“相場”の額が「定額プラン」の登場で公になり、暴利を貪られる人が減っていく──そんなところに、今回の新サービスが登場した最大の意味がありそうだ。
写真提供:ユニクエスト・オンライン
※週刊ポスト2016年11月25日号