子供はそれほど重い症状にならずに回復することが多いが、大人の感染ではサイトカインを生じ、強い免疫反応で炎症が起こり、肺炎が重症化することもある。また、ごくまれだが、髄膜炎や脳炎、心膜炎などの重篤な合併症が起こることもある。
「マイコプラズマ肺炎の治療は、抗菌薬を用います。マイコプラズマは、細胞壁がないので肺炎などで使う細胞壁ができるのを抑制し、菌を殺すペニシリン系やセフェム系などβ―ラクタム剤が効きません。このため細胞の核酸を破壊するニューキノロン系や細胞の核酸の合成を阻害するテトラサイクリン系、マクロライド系などの抗菌薬を服用する必要があります」(濱本院長)
マイコプラズマ肺炎の初期は、風邪と症状が似ており、診断がつきにくい。胸部X線画像も、他の肺炎と紛らわしく確定診断が難しい。血液検査によるマイコプラズマ抗体検査は、ペア血清で抗体が4倍以上の上昇を確認する必要があり、1週間程度かかるのが問題だった。
最近、咽頭ぬぐい液中のマイコプラズマを直接蛍光抗体法により検出する、マイコプラズマ抗原精密測定で短時間判定が可能になった。なにより感染予防はうがい、手洗い、マスク着用が不可欠だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年11月25日号