◆大統領就任以前からの仲

「孫ペーパー」を孫氏が作成した目的は、6月9日、10日に開かれたソフトバンクとロスセーチーの会議資料だった。

 東日本大震災に伴う福島第一原発事故以来、「脱原発」を掲げて太陽光など自然エネルギー発電事業を推進してきた孫氏は、海外でもモンゴルの風力発電事業に着手、インドでは巨大太陽光発電事業に乗り出し、日本、ロシア、中国、韓国を風力、太陽光、水力など自然エネルギー発電網で結ぶ「アジアスーパーグリッド構想」を提唱した。

 構想の要になるのが、ロシアから日本への海底電力ケーブルの敷設だ。これがなければ海外で安い自然エネルギーを発電しても日本に届けることができない。それはロシアの経済戦略とも一致する。

 ロシアのシベリア・極東地域には大型原発6基分の発電量があるサヤノシュシェンスカヤ水力発電所(672万kW)をはじめ5か所の水力発電所があり、新たに3か所で建設が計画されている。発電コストは1kWhあたり2セント(約2円)で、日本の平均発電コスト(約25円)の10分の1以下だ。

 その安い電力を海底ケーブルで日本に輸出すれば、ロシアは儲かり、日本の電気代も下がる。

 孫氏が事業のカウンターパートに選んだのがロシアのロスセーチーだった。文書には、会議に先立って行なわれた孫氏とブダルギン同社社長との会談で、〈水力発電と日露間の送電網敷設のコストを合わせて「1kWh=4セント(約4円)」で電力供給をめざすことで合意し、9月に開かれる国際会議で覚書を交わす。東京五輪直前の2020年6月までに日露送電網を結ぶ〉と話し合われたとある。

 そのために必要な変電所などの検討事項や、ロシアの既存・計画中の水力発電所のリスト、さらに日露間に海底ケーブルを敷設するルートとして、サハリン経由かウラジオストク経由で新潟の柏崎と結ぶ2つの案が、書類に示されている。
 
 この会議の1週間後、孫氏はこの資料を手に別の国際会議が開かれていたロシア第2の都市サンクトペテルブルクに飛んだ。ロシアのノバク・エネルギー相やガルシカ極東発展相と相次いで面談するためだった。さらにこの時、プーチン氏とも会談していたというのである。

 有力経済人とはいえ、孫氏は日本の財界トップでも政府特使でもない一民間人にすぎない。それでもロシア大統領と面談できたのは、2人は旧知の間柄で、孫氏はプーチン氏がまだ大統領代行だった時代に訪露していち早く会談し、独自のパイプを築いていたからだ。

 その席でプーチン氏は、「孫プラン」の説明を受けたのだろう。それから3か月後、プーチン氏は件のスピーチをすることになるのだった。

※週刊ポスト2016年12月2日号

トピックス

結婚を発表した長澤まさみ(時事通信フォト)
《トップ女優・長澤まさみの結婚相手は斎藤工と旧知の仲で…》インスタ全削除の“意味深タイミング”
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「クマが人里に降りてくるのは必然」「農業は野生動物に対する壮大な餌付け」 知床・ロシアでヒグマを撮った動物写真家が語る “現代の人間に欠けている自然観”
NEWSポストセブン
11人家族の宮前家
《子ども9人“大家族のパン屋さん”》「店員さんが注文を覚えきれなくて(笑)」11人家族のインフレ“金銭事情”と、大人数子育てで培ったこと「マニュアル本は役に立たない」
NEWSポストセブン
長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
インフルエンサーのぴきちんさん(Instagramより)
《2年連続ポストシーズン全試合現地観戦》大谷翔平の熱狂的ファン・ぴきちん、全米巡る“体力勝負”の脅威の追っかけはなぜ可能なのか
NEWSポストセブン
2024年に『ウチの師匠がつまらない』を上梓
「視聴率とれたらオレのおかげ?罰が当たるよ」三遊亭好楽さんが『笑点』メンバーや裏方に愛され続ける“お客さんファースト”  地方営業で土産を爆買いも
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン