国際情報

中国軍初の女性パイロットが事故死 事故多すぎとの指摘も

中国軍の事故死が多発中

 中国空軍の戦闘機「殲10(J-10)」を操縦する女性初のパイロットがアクロバット飛行の訓練中に事故死したことが中国メディアに大きく伝えられた。中国軍女性パイロットの1期生だっただけに、中国メディアばかりでなく、ロイター通信やCNN、BBCなど欧米の報道機関も大きく伝えた。「中国パイロットの事故が多すぎる」「飛行1000時間で正規のパイロットにするには、訓練が足りないのでは」などと批判的な報道も目立っている。

 中国軍上層部もあまりの影響の大きさに驚いたのか、やはり中国唯一の航空母艦「遼寧」で離着陸訓練中に事故死したベテランの男性パイロットに習近平国家主席(中央軍事委員会主席)が自ら「強軍英雄」の勲章を授与するなど、火消しに懸命だ。

 中国共産党機関紙「人民日報」は女性パイロット余旭さん(30)の事故死を1面で顔写真付きで報じ、さらに11面でも紙面の半分を使って、訓練中の余さんの写真を大きく掲載した。

 余さんは中国内陸部の四川省崇州市出身で、2005年7月、女性初の戦闘機パイロット候補35人の一人として入隊。その中から、軍の大学に入学が許された16人の中に入り、さらに4年後には4人の卒業生の一人として、女性パイロットとして正式に採用された。

 その後は、軍事パレードや中国各地の空軍基地での航空ショーなどに参加し、アクロバット飛行を演じてきた。ところが、11月初旬、河北省で訓練中、事故が発生し、機体から脱出したが、他のジェット機の翼に激突して死亡した。もう一人の乗務員はパラシュートで無事脱出し、生還したという。

 人民日報傘下の「環球時報」は余さんの事故死について「中国に4人しかいない国産ジェット戦闘機を操縦できる女性パイロットの一人であるため、中国空軍にとって大きな損失だ」と伝えている。

 香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は中国では戦闘機パイロットの訓練中の事故が多いとして、9月下旬には天津で、5月にも浙江省で、4月には空母「遼寧」上で事故が発生していると報じた。

 その原因として、同紙は「欧米では正規のパイロットになるには飛行時間は1500時間以上であるのに対して、中国軍は1000時間で、訓練が足りないのではないか」、「戦闘機の性能自体が悪く、機体に構造的な問題がある可能性も」など、専門家のコメントを紹介している。

 このようななかで、習主席の命令として、今年4月に「遼寧」号の離着陸訓練で死亡したAクラスの戦闘機パイロット、張超・海軍少校(少尉に相当)に対して、「強軍先鋒」の勲章と栄誉称号を授けることが決まった、と報じられた。

 これについて、サウス紙は「失態続きの中、軍幹部が軍内の士気向上のために勲章授与を決めたのでは」と指摘している。

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン