山口組三代目若頭で山本健一初代山健組組長は、服役中には妻に、〈頑張って平気で帰宅しますから、安心して下さい〉といった手紙を送る「筆まめ」で知られた。山口組の金庫番と呼ばれた五代目山口組若頭の宅見勝・初代宅見組組長も、愛人との子供、さらには愛人の連れ子まで宅見姓を名乗れるようにしたという。
「ヤクザは、『釣ったあとも餌をあげ続ける』。いざというときに自分のために死ぬことも辞さない人間が数多くいるのが良いヤクザなので、大物組長ほど、女性にも子分にも気配りをする。
ヤクザはそれで相手を『ジュリエット』にする。女性の場合は周囲に交際を反対されることで、かえって心酔していく。その上、自分を最後まで守ってくれるという安心感もある。ヤクザと付き合っているから危険な目に遭う確率も高くなるのですが、それは気にならなくなる。これは子分との関係でも同様です」
抗争で子分が親分のために命を賭けるのは、このような心理的背景がある。では、親分が抗争を始めるときの心理的背景とは何か。
「ヤクザは独特の心理戦をしながら生きているため、大物同士が一度感情的な部分で対立してしまうと、譲れない意地と意地のぶつかりあいになり、一筋縄ではいかなくなってしまう。だから抗争になるんです」
一般市民が犠牲となることだけは勘弁してほしい。
※週刊ポスト2016年12月2日号