◆きれいなカネ
今年4月、中米パナマの法律事務所から流出したタックスヘイブン(租税回避地)にペーパーカンパニーを持つ顧客などの情報は「パナマ文書」として話題になった。
大企業や富裕層による“税逃れ”に注目が集まり、当初約230人の日本人の名前が公表された。だが、それは氷山の一角だった。
その後NHKが調査を進めたところ、716人の名前が確認された。その過程で明らかになったのは、裏社会との繋がりである。
「ペーパーカンパニーの代表者の中には、盗難パスポートを悪用され、何者かに勝手に名前を使われた日本人もいた。素性を隠したい富裕層の“隠れ蓑”として利用されたと思われる。そうした手口は裏社会特有のものだ。NHK報道では触れなかったが、暴力団がタックスヘイブンの仲介に関与している可能性を指摘する声は多い」(捜査関係者)
『パナマ文書』(徳間書店)の著者で経済評論家の渡邉哲也氏が指摘する。
「パナマ文書には六代目山口組、神戸山口組双方の中核幹部が関係する企業の名前があったと言われています。多額の資金運用を考えた時、彼らがタックスヘイブンを利用する可能性は高い」
暴排条例施行後、暴力団構成員は銀行口座や証券口座は開設できなくなり、取引も禁止された。だが、タックスヘイブンを使えば、その縛りから逃られる。それが暴力団の“海外進出”の背景にある。渡邉氏が続ける。
「タックスヘイブンの英領ヴァージン諸島などでは、実体のわからない法人名義で銀行口座を作ることができる。まず香港やシンガポールに“踏み台”として会社を作り、そこを法人株主にした会社をヴァージンに設立し、その法人名義の口座を作る。この口座を利用すれば、個人名はわからないし税金もかからない。“きれいなカネ”として日本国内での取引にも使える仕組みなのです」