コラム

税制改正 タワーマンションへの向かい風は限定的か

課税強化の影響はそれほど大きくない?

 首都圏の新築マンション市況は調整局面に入っている。そんな中、タワーマンションの高層階の固定資産税引き上げ方針が出されたことにより市場にどのような影響が出るのか。不動産の市況調査を手がける東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員が解説する。

 * * *
 一戸平均価格がミニバブル期の水準を超えて5000万円台に突入した2015年をピークに、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の新築マンション市場は2016年1月から調整局面に入っている。価格が下落しているエリアも出始めており、特に価格が高くなりすぎた千代田区や港区などでは伸びの鈍化が顕著にみられる。

 千代田区や港区は、高額所得者が買う物件がある一方、投資に向く物件も多い。練馬区や板橋区のような実需のニーズで大部分が占められているエリアと異なり、都心の一等地は投資のニーズが積み重なってくる。首都圏の新築マンション市場は近年、投資ニーズが牽引して価格を押し上げてきたが、価格が高騰すると利回りが低下してしまうため、投資家も慎重にならざるを得ない事情がある。

 ただ、一時の旺盛な買いはないとはいえ、海外の投資家や富裕層の間では、麻布、赤坂、青山の「3A(スリーエー)」地区、千代田区の「番町アドレス」は根強い人気がある。価格が落ち着いてくれば、彼らの買いも期待でき、価格がバブル崩壊後のように大幅に下落していくことは当面ないだろう。

 人気も価格も著しく上昇している湾岸エリアのタワーマンションも同様だ。たとえば中央区勝どき地区、東京オリンピック選手村建設予定地の同区晴海地区、江東区などでは、平均坪単価300万円を超える高額物件が話題になっている。だが、さすがに坪300万円を超えてくると、湾岸エリアにこだわらず、港区の中古物件など他の好立地に選択の幅を広げる人も多くなると思われる。

 政府・与党は、2016年12月にまとめる2017年度税制改正大綱に、タワーマンションなど高層マンションの高層階の固定資産税を引き上げる方針を盛り込む見通しだ。現行では1階も50階も同じ面積なら、相続税の算定基準でもある固定資産税評価額は同額になる。このため、取引価格が高い高層階を買って、現金で相続するよりも相続税を低く抑える「タワマン節税」が富裕層の間でも人気を集めていた。

 大綱が発表されるまで全貌はわからないが、20階建て以上の分譲物件を対象に、高層階になるほど固定資産税が高くなり、低層階は減税となる方向と報道されている。18年以降に引き渡す新築物件が対象といわれているが、現状のところ課税強化の動きはさほど大きくなく、湾岸タワーマンション物件への向かい風は限定的とみている。

 湾岸エリアの物件は、購入して貸すという投資目的で買う人が多い。借りる方も高層階を望む。したがって、節税効果が薄れれば、タワーマンションを購入対象から外してしまう投資家や資産家は増えるのではないか。投資層が抜け、実需層が大半のマーケットとなると、今までのように分譲価格をどんどん上げられる状況ではなくなるだろう。湾岸タワーマンション物件の供給は今後、さらに増加すると予想されており、売れ行きがどうなるのか懸念する向きもある。

マネーポスト2017年新春号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
奈良公園で盗撮したのではないかと問題視されている写真(左)と、盗撮トラブルで“写真撮影禁止”を決断したある有名神社(左・SNSより、右・公式SNSより)
《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン