おそらくトランプは、そういった歴史やアメリカが世界秩序の維持に果たしてきた役割など、まったく知らないのだろう。サッチャー女史の予言通りにNATOがバラバラになれば、ロシアの暴走は加速するはずだ。
もう一つ深刻な問題がある。トランプは、「就任100日行動計画」の中で「国連の温暖化対策への資金拠出取りやめ」「シェールガスや天然ガスなどエネルギー規制の緩和」を実行すると掲げている。要は、「自国の経済発展のためなら地球の環境なんか知ったことではない」というわけだ。
エネルギー開発を進めてCO2を撒き散らしても、アメリカ企業が利益さえ出せればいいというのである。
国連の温暖化対策は、アメリカと中国が参加しなければ意味がない。両国が「世界の2大CO2排出国」であり、あわせれば世界全体のCO2の排出量の4割を占める。中国はもともとやる気がない上にアメリカまで「環境無視」の姿勢を取れば、世界の環境対策は破綻する。
私は長年「中国が環境的に地球を壊す」と指摘してきたが、今後は「中国とアメリカが環境的に地球を壊す」ことになるだろう。
※SAPIO2017年1月号