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トランプ大統領誕生でNATOバラバラ、ロシア暴走の危機

トランプ新体制の行方は AP/AFLO

 世界的に注目された米大統領選は、事前の予想に反してドナルド・トランプ氏が勝利した。過激な発言を繰り返すトランプ氏が大統領になることで、世界はどう動くのか? ジャーナリストの落合信彦氏が解説する。

 * * *
 かつて強く美しかったアメリカは、ドナルド・トランプという怪物を生んだ。近著『そして、アメリカは消える』で指摘した通り、これまで数十年かけてアメリカは少しずつ劣化してきたが、「トランプ大統領」で一気に崩壊へ向かうことになるだろう。

 そしてアメリカの崩壊は、世界秩序の崩壊をも意味する。トランプは、「世界の警察官を務める財政的な余裕は、アメリカにはない」と繰り返してきた。さらに勝利演説でも「国際社会に伝えたい。われわれはアメリカの利益を第一に考えていくということだ」と訴えた。

 オバマが「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と言ってから、どうなったか。中国は南シナ海などで海洋進出を加速させ、ロシアのプーチンもウクライナを侵略し、暴れ回っている。トランプが自国第一主義で「引きこもり」を強化すれば、ますます世界は荒れ果てていくだろう。

 国連やNATO(北大西洋条約機構)も、アメリカが圧倒的な軍事力を持っていたから成り立っていたと言える。トランプは、NATO加盟国がロシアから攻撃を受けてもアメリカは防衛に乗り出さない可能性があると発言していた。それを聞いたプーチンは大喜びしたはずだ。

 強いアメリカを形作ったレーガンは、トランプとはまったく逆にNATOをリードした。1986年4月に西ベルリンのディスコで起きた爆弾テロでは、アメリカ兵が一人、死亡した。CIAとNSAの情報で、リビアのカダフィが仕組んだテロだったと判明した。

 その時、レーガンはリビア爆撃のためNATOの国々に基地使用を求めたものの、彼らは断ってきた。そこでレーガンはサッチャー女史に電話し、イギリスの基地を利用する許諾を得たのだ。サッチャー女史は、リビア爆撃から5年後のインタビューで私にこう語っている。

「アメリカあってのNATOです。アメリカがNATOから出て行ってしまったら、どうなると思いますか? おそらくNATOはバラバラになると私は思っています」

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