例えば、降圧剤や糖尿病薬、高脂血症薬などは病状が安定していれば、医師の診断はそれほど重要視されない。病院に行かずとも薬局で継続処方してもらえれば、患者の時間的負担は軽減される。
慢性的な腰痛治療のための鎮痛剤や湿布、さらにバイアグラなどのED治療薬にも同じことがいえる。特にED治療薬は、毎回医師の診断を受ける“辱め”を回避でき、喜ぶ患者も多いのではないか。
もっとも、これまではそんな患者側の不満に業界側が耳を傾けることなどなかった。ところが、医療業界の中枢で、同様の疑問が湧き上がってきたのである。
10月19日、厚労省の中央社会保険医療協議会・総会で、健康保険組合連合会(健保連)理事の幸野庄司氏が、日本医師会副会長の中川俊男氏との議論の中で、こんな爆弾発言をした。
幸野氏は、「今の薬局は病院の近くに開設され、処方箋を持って薬をもらうだけ。患者から見れば正しい姿と思えない」と薬剤師の権限の弱さに疑問を投げかけ、さらに「なぜ毎回、医師を受診して再診料や処方箋料を取られなければならないのか」と、薬が処方される際に医師が受け取る料金に噛み付いた。“病院に行かないと薬がもらえない”という仕組みに公然と疑問を投げかけたのだ。
これは2018年度の調剤報酬改定に向けて医師と薬剤師の権利を巡る論争の中での一幕だった。
医師会が医師を代表する立場なら、健保連は保険料を支払う側であり、患者を代表する立場である。ついに患者側の長年の不満が爆発したのだ。
※週刊ポスト2016年12月23日号