◆「ドラマチックにしないと」
「井伊直虎が『次郎直虎』を名乗っていたこと、そして井伊直盛の娘に出家して『次郎法師』となった女性が実在したことは明らかなのですが、“次郎法師が井伊直虎になった”ことを示す史料は存在しない。にもかかわらず、2人の『次郎』が同一人物だと一部の歴史家に誤解されてしまった可能性が高いのです。
次郎直虎と次郎法師を同一人物とした場合、説明が成り立たなくなる文献もある。さらに、次郎法師が幼い直政を育てたという(大河の)ストーリーも明確な根拠は存在しません」(達夫氏)
そして達夫氏が調査中の文献(彦根藩の記録)によると、「次郎直虎」なる人物は井伊家の家系図に存在せず、「少なくとも井伊直盛(次郎法師の父)とは関係のない男性だった」(達夫氏)とも言うのである。
文献の詳細、つまり「次郎直虎の素性」については「最終的に調査をまとめてから発表したい」(達夫氏)として多くを語らなかったが、11月発刊の『井伊直虎完全ガイド 直虎の真実100』のインタビューでは、
〈(次郎直虎は)ごく短い期間、井伊家の実質的な支配者となった人物なのです〉
と、謎の一端を明かした。これらの「新史実」が明らかになれば、大河のストーリーにも影響が出かねないように思えるが──。