科特隊の制服は鮮やかなオレンジ色だった。『Q』はモノクロで、『マン』はカラー作品。カラーテレビ時代の幕開けだったため、派手な色になった。
「ロケ先でも目立ち、ご飯を食べに行くのにも苦労しました。スキーウェアを改造したもので、肌にフィットして夏は暑く、下に服が着込めないから冬は寒かった。2着ずつ配られたんですが、乱闘シーンが多かったアラシ隊員(石井伊吉。現・毒蝮三太夫)やイデ隊員(二瓶正也)は、破れた箇所の修繕に追われていました」(桜井氏)
ちなみにフジ・アキコ隊員は、第33話で悪質宇宙人メフィラス星人に操られ「巨大フジ隊員」になったことで知られる。歴代シリーズでも、他のヒロインの誰もできなかった“偉業”だ。
「視線が定まらない表情をしながらビルを破壊するシーンでは、なかなか壊せなくて大変でした。演技の勉強をさせてもらいましたね。ただ、迷惑な一面もあったかな。巨大化しただけなのにその後『怪獣図鑑』に載せられちゃったんですから(笑い)」(桜井氏)
2人とも、自分たちの作り上げたものが「まさか50年も続くとは思わなかった」と口を揃える。
「今は円谷(英二)さんが口癖のようにおっしゃっていた言葉の意味がよくわかります。うまくできた模倣品や二番手より、どんなに稚拙でもオリジナルが一番すごい。無から有を生むことこそがクリエイティブだと」(桜井氏)
「50年経ってそう思いますね。今、自分たちが当時の映像を見ても、格好良いなって思うものね」(古谷氏)
「苦労して良かったよね」──桜井氏がそう古谷氏に語りかけると、2人はにこやかに笑った。この写真集は、特撮に青春をかけた者たちの熱気を、今の時代に鮮烈に伝えている。
●撮影/山崎力夫 取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2016年12月23日号