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【書評】「法治国家」であることを証明できない韓国の甘え

「法治国家」であることを証明できない韓国の甘え

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンスだが、本読みの達人が選ぶ書は何か。作家の関川夏央氏は、韓国の混迷を読み解く書として『キャプテン・コリア』(荒山徹・著/光文社/1700円+税)を推す。関川氏が同書を解説する。

 * * *
 韓国の混迷は、他人事ながらひどい。大韓民国成立以来六十九年、十一人の大統領が誕生したが、全員「畳の上で」死ねなかった。

 初代李承晩をはじめ七〇年代までの大統領たちが、亡命、クーデター、暗殺などで去ったのは、途上国から中進国へ向かう過程では同情できる。しかし一九八七年「民主化宣言」以来誕生した六人の大統領が退任後、誰も無事に晩年を送れなかったのはどうか。盧武鉉氏などは自殺した。

 五年任期の大統領は、二年半を過ぎると必ずレイムダック化する。司法関係者の間で、次期大統領候補者への忠誠心競争が始まり、現政権のあら探しをする。コリア文化では、水に落ちた犬は叩くのである。朴槿恵氏の場合は、叩かれたうえに棒で沈められた。「民主化」とは「李朝回帰」かとさえ思う。

「セウォル号」沈没時の「七時間の空白」が大統領への不信感を増幅した。何をしていても構わないが、現地メディアを引用しただけで逮捕された産経新聞ソウル支局長に謝罪し、韓国は「法治国家」だと証明することが先決だろう。それができないのは日本への「差別」と「甘え」のゆえだろう。

 父親の朴正煕大統領は、韓国の自称知識人と日本の進歩的マスコミには評判が悪かった。しかし彼は、北朝鮮というぶ厚い国境と日本からの経済援助を有効に使って韓国を「島国化」し、貿易国家としてテイク・オフさせた。彼には目標と方法があった。その娘さんが「大陸」中国共産党にすり寄って、ハルビンにテロリストの記念館を建ててもらうとは情けない。

 そんなフラストレーションを、荒山徹は雄大な想像力とユーモアで伝奇小説『キャプテン・コリア』にえがいた。コリアを勉強したものなら、誰でも(外国ながら)「憂国」せざるを得ないのである。

 もし次期大統領に前国連事務総長のパン・ギムン(潘基文)が選ばれるとしたら、それは韓国人自身が呼ぶ災害だから、関知しない。関知したくない。

※週刊ポスト2017年1月1・6日号

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