日本が独立した後、旧財閥と組んで輸入協会や輸入組合などを立ち上げ、パインやバナナの割り当て権利を取った。でも、規模の大きい旧財閥の総合商社には勝てないと悟り、大阪で小売業のスーパー「ライフ」を始めたわけです。10年で11店舗まで拡大して、1971年には東京1号店を開店しました。
現在、ライフコーポレーションの売り上げは年6500億円ほど。今後も拡大をめざしますが、怖さもあります。中内功さんのダイエーはあれほど順調だったのに、売上高が4兆円に到達してから潰れたし、堤清二さんの西武百貨店も売り上げ4兆円を超えてから倒産しましたから。
これから先、ライフという組織は岩崎高治社長に任せ、流通の業界団体をまとめたい。僕が会長を務める日本小売業協会には、経団連のような政治と行政に対する影響力が欠けています。
経団連のメンバーである重厚長大産業はロボット化が進んで従業員が少ないけど、小売業を担う中小企業は雇用の宝庫で、社会に大きく貢献しています。だからもっと発言権を強くして、政治的な影響力を持つ必要があるんです。
それが90歳になった僕の現在の課題であり、最後のご奉公と思っています。
人間、生まれるときは千差万別で、生まれる国や家庭によって大きな違いがあります。でも、死ぬときは世界中みんな平等で、何もなくなって灰になる。
戦争で亡くなった多くの仲間の遺体はいまだに日本に返ってきていません。だから僕は法事や戒名をすべて拒否するし、墓もいらない。最期を迎えたら海に散骨してもらうつもりです。
●しみず・のぶつぐ/三重県津市生まれ。大阪貿易学校卒業。1956年に現社の前身となる清水實業を設立。現在は全国に256店(2016年2月現在)を展開する。『時短は国を亡ぼす』など、著書も多数あり。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号