ビジネス

1920年代のフランスで800億円散財した日本人男性の生涯

パリで大散財した伝説の日本人男性とは?

 戦前の大富豪たちは、今では考えられないほどのスケールでカネを稼ぎ、そして使いまくっていた。彼らは、世界と伍していくために邁進していく戦前の日本の映し鏡でもあった。歴史に造詣の深いライフネット生命会長・出口治明氏が監修、忘れられた大物実業家たちの軌跡を辿る。

 * * *
 1920年代のフランス・パリで、現在の価値にして800億円とも言われる金を使い、社交界で名を馳せた日本人がいた。

 その男の名は薩摩治郎八。東京の木綿問屋の三代目として生まれ、祖父の代から一族が築き上げた金の全てを湯水のごとく浪費した彼は、“東洋のロックフェラー”“バロン薩摩”と呼ばれた。

 1901年生まれの治郎八は、19歳でイギリスのオックスフォード大学に留学。20歳からパリで暮らし始め、現地の多くの芸術家と交流を持った。とりわけ藤田嗣治を筆頭とした日本人画家のパトロンとして知られる。

「1920年代のパリは日本人ラッシュで、その数は3000人に上ったと言われています」

 そう語るのは薩摩治郎八の評伝『蕩尽王、パリをゆく』の著者・鹿島茂さんだ。

 ときは第一次大戦後のヨーロッパ。フランスの国力の衰えによって、通貨フランの下落が起こった。一方、大戦による好景気に沸く日本は数多くの成金が生まれていた頃で、財閥の御曹司や画家がこぞってパリを訪れ始めたという。

 なかでも薩摩治郎八はフランスの社交界に入り込み、そこで豪快な散財を続けた稀有な日本人であった。

「社交界は大金持ちと大貴族の閉じられた世界。誰を入れて誰を排除するか、という見えざる文法がある場所です。幸い治郎八は、一時は画家を目指そうとしただけに芸術の世界に造詣が深かった。藤田嗣治らの伝手を頼って、文化経由で社交界に入っていったのです」(鹿島さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン