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【法律相談】妻以外の女性に産ませて自分の子供にできる?

妻以外の女性に子供を産ませることの法的解釈

 少子化が叫ばれるなか、望んでも子宝に恵まれないカップルは少なくない。そんな場合、他の女性に産ませるという選択肢も存在するが、法的な問題はあるか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 結婚して30年、子供に恵まれませんでした。でも、どうしても子供が欲しくてたまりません。もし、妻が許してくれるのであれば、他の女性に身籠ってもらい、その子を認知し、引き取りたいと考えています。この願いは道義的によくないことだと理解していますが、法的には何か問題があるのでしょうか。

【回答】
 さまざまな法的な問題が生じる可能性があります。あなたは、生まれた子供を家に引き取り、奥さんとの間の嫡出子として育てる計画ですが、思い通りにいくという保証はありません。まず、母親になる女性の問題です。

 子供を認知した父親と母親との間で合意ができない限り、親権者は母親です。自宅に引き取りたいと思っても、子を監護している母親の同意が必要です。子供を産んだ母親の気持ちが変わると、引き取ることは事実上不可能です。

 連れ去るなどの実力行使をすれば、未成年者略取誘拐の罪に問われます。引き取る代わりとして、多額のお金を支払うと人身売買の罪が気になります。商業的人身売買とは違いますが、子供は父親の所有物ではないので、子供を母親から買うような発想は間違いです。養育費を超えるような大金の支払いは考えものといえます。

 次に未成年者の養子縁組は、親権者の承諾が必要です。また、配偶者がいる者が未成年者を養子にするときには、配偶者とともにする必要があります。未成年者が配偶者の一人の嫡出子である場合は例外になりますが、父親が認知した婚外子の場合は、原則通り二人で縁組しなければなりません。養子縁組が嫡出関係を生じさせるからです。

 認知した父親が裁判所の許可を得て親権者になることも可能ですが、そのためには子の福祉の観点から父親のほうが親権者としてふさわしく、子の利益のために親権者の変更の必要があると認められることを要するとされているので、簡単ではありません。結局、子の母親と奥さん二人の理解と協力が先決となります。

 もし、女性が子供に愛情を覚え、自分で育てる決意をすると、あなたは監護教育には直接関わることができないまま、成人まで養育費を支払い続けなければなりません。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2017年1月27日号

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