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橋爪大三郎氏「国家緊急権」があればシン・ゴジラも怖くない

社会学者の橋爪大三郎氏

 憲法より大事なものがある。社会学者・橋爪大三郎氏はあえてそう言う。未曾有の国難に襲われた際、政府は憲法や法律に違反する行動をとることができる。その“究極の権力”を「国家緊急権」と呼ぶ。

 * * *
 昨年「シン・ゴジラ」が話題になりました。首都圏に出現したゴジラに街は破壊され、放射能に汚染される。総理ほか閣僚も死亡する。まさに国家の緊急事態です。

 映画では、外遊中の農水大臣が総理代理に就任し、主人公の長谷川博己演じる内閣官房副長官がゴジラ特命担当大臣に任命され、ものの見事に国難に対峙していく。

 しかし現実にはそんなスムーズに臨時政府ができるはずはない。組閣するには、煩雑な手続きが必要です。突然、ゴジラに襲われた街の市民にしても、避難しようにも手段がなかったはず。

 あるいは、それぞれが勝手に退避しようとして渋滞や混乱が起きて退避できなかったでしょう。

 さて、ここで現実の話に戻ります。人間には、命の危険が迫っているときに逃げる権利はある。けれど、無秩序に逃げると、さらに犠牲者が増える。そこで統制が必要になる。

 統制とは命令です。たとえば、「子どもと老人、入院患者の避難を優先する」「A地区の避難がすみ次第、B地区」といった具合です。求められるのは効率的で最善の解決策です。

 しかし平和時の法秩序憲法や法律で、それは難しい。たとえば、現在の法律で避難指示を出せるのは地方自治体の首長です。それぞれの首長が独立して意思決定するので、A県知事はB県への避難を指示したけれど、B県は受け入れできないなんて状況が起きるかもしれない。

 だから、国民の命を守るため、法律や憲法に基づかない行動に踏み切る必要がある。その権限を国家緊急権と呼びます。

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