ビジネス

NECがAI用いてがん細胞増殖阻止するワクチンを開発中

NECが夢のワクチンを開発中

 ワクチンといえば子供のためと思いがちだが、最新の知見からは「中高年こそワクチンで免疫力を高めよ」というアプローチが注目されているのだ。ワクチンで予防できる疾患は、がんや認知症といった “国民病”にまで広がろうとしている。

 疫学研究が進み、これまで生活習慣や遺伝との関係性が指摘されてきた「がん」という疾病が、むしろ細菌やウイルスなどによる「感染症」と密接に結びついていることがわかってきた。

 たとえば、肝臓がんの原因となるB型肝炎ウイルスについては、ワクチン接種によってがんの発症リスクを下げる取り組みが進められている。さらに、がん細胞そのものの増殖を阻止するワクチンの開発も進められている。

 昨年12月、NECは創薬事業への参入を発表。「がん治療用ペプチドワクチン」開発を推進する新会社を設立した。NECの広報担当者の説明。

「このワクチンは、『がんを攻撃する免疫』を活性化する治療法です。開発.実用化のためには約5000億通りあるアミノ酸配列のなかから、免疫を活性化するペプチド(アミノ酸が数個から数十個結合した分子)を見つけなければならず、大きな課題となってきました。

 それが今回、当社独自のAI技術を用いることで、短期間かつ低コストでワクチン候補となるペプチドを見つけられるようになった。すでに臨床研究を通じて食道がんや乳がんなどの治療に効果が期待できることがわかっています」

 同社はワクチン実用化への研究を進めるために新会社設立に踏み切ったという。

 また、「オーダーメイドのがん治療ワクチン」の研究も進んでいると語るのは秋津壽男・秋津病院院長だ。

「がん患者の体から摘出したがん細胞を培養するなど処理を加え、その人のがん細胞にだけ効くワクチンをつくるというアプローチで、『自家がんワクチン療法』と呼ばれています」

 他にも様々なかたちで「自分の免疫力でがんを防ぐ」試みが進められている。白澤卓二・白澤抗加齢医学研究所所長がいう。

「注目されているのは『腸内環境』を改善することで免疫機能を上げ、がん細胞を攻撃する力を作り出すという手法。私の診た前立腺がんの患者さんでも、乳酸菌で腸内環境を整えることで、ステージIVから転移が進まなくなった例がある」

 腸内細菌叢と免疫機能の関係は医学界の最注目テーマの一つだ。それががん予防にもつながる可能性が示唆されているのだ。

※週刊ポスト2017年2月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン