「『近松』をやり遂げてマスコミにちょっと注目された時、勘違いが始まったんですよ。とんでもない生き方を数年間しました。そうすると、見事に潮が引いていくんですよ。その時に女房に『そろそろ気がついて。また一から出直す覚悟でやったほうがいいんじゃないですか』と言われましてね。それではたと気づいて、『よし、もういっぺん気合いを入れて蘇生するぞ』と決意しました。今度は一歩一歩を丁寧に確実に上がっていこう、と。

 あのまま勘違いしていたら、もうとっくに消えていましたね。

 やっぱりワルな役のほうが俺なんだよね。だから、ワルな役がどんどん回ってくる。水を得たという感じがしているんです。立派な役なんかもらっちゃうと、かえって『いや、えらいこっちゃ』となってしまう(笑)。

 役の大きさはどうでもいいんです。血肉をつけられない役だったら、やりませんよ。どんな小さな役でも、血肉をつけて現場に行くことができると思えたら引き受けます。人間が見えない役だったら、俺は家の庭に水をまいていたい。

 人にはそれぞれの花があって、俺は俺なりの花を開かせるしかない。俺が胡蝶蘭になろうとしても墓穴を掘りますよ。霞草とかタンポポでいいから、それを満開にさせることがテーマだから。慢心したら次はないと思う。人間を表現したいんです」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

◆撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2017年2月10日号

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