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記者がスイスで見た68歳女性、安楽死までの20秒間

自殺幇助による死の前日のサンドラ(撮影/宮下洋一)

 安楽死は、「積極的安楽死」と「消極的安楽死」のふたつに分類される。前者は「医師が薬物を投与し、患者を死に至らす行為」。後者は「医師が治療を開始しない、または治療を終了させ、最終的に死に至らす行為」と定義される。

 そして、「安楽死」とは別に「自殺幇助(ほうじょ)」という方法による死に方もある。こちらも、安楽死同様、「積極的自殺幇助」と「消極的自殺幇助」のふたつに分けて考えられる。

 前者は、「医師が薬物を投与するのではなく、患者自身が投与して自殺する行為」。後者は「回復の見込みのない患者に対し、延命措置を打ち切ること」で、一般的に日本語で表現される「尊厳死」がこれに当たる。

 これらが合法なスイスで安楽死や自殺幇助が認められるためには【1】耐えがたい苦痛を伴っていること、【2】回復の見込みがないこと、【3】本人の明確な意思があること、の3つが最低限必要となる。世界の安楽死事情を取材するジャーナリストの宮下洋一氏が、スイスで見た安楽死までの20秒間をレポートする。

 * * *
 イギリス在住の元ハーバード大学の研究者、サンドラ(享年68、写真)が、私の目の前で致死薬を体内に流し込み、自殺幇助による死を遂げたのは、昨年4月のことだった。彼女は、多発性硬化症と三叉神経痛を患っていた。

 サンドラがスイスで死を迎える前日の夕方、私は彼女のホテルの部屋で会話を交わした。痛みが走る顔面を押さえながらも、時々、笑みをこぼして話す場面が忘れられない。

「私の人生は今後、改善される見込みはないでしょう。ただ、坂を滑り落ちていくだけですもの」

 彼女は夫をイギリスに残したまま、スイスに渡った。自宅玄関前での別れは辛かったが、何よりも彼女を悲しませるのは、自殺幇助を終えた後に起こり得ることだった。

「彼が1人でイギリスに帰る姿を想像したくなかったの」

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