2012年に悪性黒色腫が全身転移した患者に対し、放射線治療に免疫チェックポイント阻害剤(ヤーボイ)を併用したところ、2か月後には放射線が当たっていない場所のがん細胞の縮小や消滅が確認された症例がある。2015年には転移性肺がんに対し、抗がん剤と末梢血中の白血球を増やすGM-CSFを投与、放射線治療を併用した結果、約27%でアブスコパル効果が確認され、肺がん14例中2例で腫瘍が消滅したと欧米一流医療雑誌が報告している。
「放射線治療と免疫療法で、アブスコパル効果が起こるのは、2つの理由が考えられます。弱かった免疫を補完して免疫を高めるのと、免疫を抑制しているものを外して免疫が働くようにすることです。今後は放射線の照射量や免疫療法併用の最適なタイミングなどの研究が進むものと思われます」(鈴木教授)
日本では肺がんに対し、免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボが保険承認されているが、すべての患者に効果があるわけではない。そこでオプジーボを投与して効かない患者に対し、放射線を照射すると、アブスコパル効果で転移巣やCT、MRIでもわからないような、ごく小さながんを消滅できる可能性がある。将来的には、術後の抗がん剤治療の代替となる可能性も高い。
●取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2017年2月17日号