ビジネス

解体進む東芝 「第二のカネボウになる」との懸念も

決算発表も開示できない事態に頭を下げる東芝経営陣

 創業から142年もの歴史を持ち、日本を代表する総合電機メーカーとして常に業界を牽引してきた東芝。だが、企業スローガンにもなっている「Leading Innovation(リーディング・イノベーション)」の精神は、いまや見る影もない。

 一昨年の不正会計で露呈した“ザル経営”ともいうべきコーポレートガバナンス(企業統治)の欠如。それは7000億円以上に膨れ上がっていた巨額損失に気付かぬまま突き進んだ原発事業で、致命的なダメージとなって跳ね返ってきた。そして、昨年12月末には、1912億円もの債務超過、つまり倒産寸前の状態に陥ってしまった。

「いまの数字を見る限り、正しい経営判断だったとは言いにくい」

 2月14日に記者会見した東芝の綱川智社長は、2006年に米国の大手原発メーカー、ウェスチングハウス(WH)を買収した当時の経営そのものにも否定的な見解を示した。

 しかし、会社全体の首が回らなくなるまで放置した責任の所在は明らかにせず、投げやりな雰囲気さえ漂う現経営陣の対応に、詰めかけた300人以上の記者からは相次いで溜め息が漏れた。

 問題は、今後いかにして債務超過状態を脱し、どんな事業で東芝の「看板」を守っていくかだ。懸案の原発事業は、廃炉や保守作業に専念しつつも新設工事からは撤退する縮小方針だという。WHの出資比率も引き下げたい構えだが、事はそう簡単ではない。

「特に東日本大震災以降、原子力事業はリスクが大き過ぎるため、誰も引き受け手がいない。かといって、事業そのものを辞めれば、今以上に多額の損失を計上しなければならなくなる」(エース経済研究所の安田秀樹アナリスト)

 引くに引けない“聖域”となってしまったのである。そして、もうひとつ東芝の主力事業に据えられていた半導体事業も崩壊の憂き目が近い。

 東芝の半導体事業は2016年3月期で1兆5000億円を超える売り上げがあり、そのうちの半数をスマートフォンなどに使われるNAND(ナンド)型フラッシュメモリー事業が占める。需要の高まりとともに東芝の稼ぎ頭に成長してきた事業のため、「分社化して他社から出資を仰ぐにしても20%未満に抑えたい」と、東芝幹部も言い続けてきた。それだけ、最後まで主導権を死守したい事業だったのだ。

 しかし、2月14日の会見で綱川社長が「マジョリティにこだわらない」とあっさり発言。「100%売却もありえるのか」との質問に、「すべての可能性がありうる」と答えたことで、東芝の危機が改めて浮き彫りになった。雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏がいう。

「債務超過を回避するために、なりふりかまっていられないのは分かりますが、原発事業の見通しがつかないうえに、虎の子の半導体事業まで手放してしまったら、もはや東芝は何で生きていくのか存在意義が問われることになるでしょう。昨年には第3の柱と期待していた医療事業のほか、白物家電も売却してしまいましたし。

 残るのは原発以外のエネルギー事業と社会インフラ事業ですが、日立などに比べると、ひ弱さが目立つばかりか、国際的地位も極めて低い。つまり、残された事業だけでは国内で細々と生きていくしかないのです」

 前出の安田氏も、「火力・水力発電や鉄道システムなどの分野では、東芝が独占していて安定的な利益を稼ぐ事業もありますが、ビジネスのボリュームとしては相当小さい」と指摘する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
「埼玉を日本一の『うどん県』にする会」の会長である永谷晶久さん
《都道府県魅力度ランキングで最下位の悲報!》「埼玉には『うどん』がある」「埼玉のうどんの最大の魅力は、多様性」と“埼玉を日本一の「うどん県」にする会”の会長が断言
NEWSポストセブン
受賞者のうち、一際注目を集めたのがシドニー・スウィーニー(インスタグラムより)
「使用済みのお風呂の水を使った商品を販売」アメリカ人気若手女優(28)、レッドカーペットで“丸出し姿”に賛否集まる 「汚い男子たち」に呼びかける広告で注目
NEWSポストセブン
新関脇・安青錦にインタビュー
【独占告白】ウクライナ出身の新関脇・安青錦、大関昇進に意欲満々「三賞では満足はしていない。全部勝てば優勝できる」 若隆景の取り口を参考にさらなる高みへ
週刊ポスト
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
《出所後の“激痩せ姿”を目撃》芸能活動再開の俳優・新井浩文、仮出所後に明かした“復帰への覚悟”「ウチも性格上、ぱぁーっと言いたいタイプなんですけど」
NEWSポストセブン
”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン