ビジネス

ジャンボ機撮り続ける写真家 雁行撮影など貴重な体験語る

石川・小松空港に初めて就航したジャンボ機(1981年2月)

 1970年7月1日、日本航空が羽田~ホノルル線で就航させた大型旅客機「ボーイング747」──。“ジャンボジェット”と呼ばれた同機は従来の2倍の客数を乗せることができたため、1人あたりのコストが下がり、航空運賃が安くなった。すると、同年66万人しかいなかった海外旅行者は2年後に130万人と倍増、1990年には年間1000万人を超えるまでに膨れ上がった。

 写真家の青木勝氏は、日本人の夢だった海外旅行を身近にしたジャンボ機を46年間撮り続けてきた。24歳を迎えた1968年、「海外を飛び回る仕事がしたい」と一念発起し、スポーツニッポン新聞社を退社。フリーになって2年目に日本航空広報室が嘱託カメラマンを探していることを知る。

「当時は飛行機を専門に撮るプロカメラマンがいなかった。僕自身、飛行機に乗ったこともなければ、撮ったこともない。できるかどうかわからないけど、挑戦してみようと思いました」

 広告用写真を撮影するため、2機を同時に飛行させ、空に浮かぶジャンボ機をもう1機の窓越しから撮影した。

「ぶつかるんじゃないかというくらいすぐ横を飛んでいました。超ベテランパイロットが操縦していましたが、ものすごい技術だと思います。今では雁行して撮影するなんて贅沢なことはやらないので、貴重な経験でした」

 海外では、銃を持った警備員に監視されながらシャッターを切ったことも。

「社会主義国や中東諸国は、特に厳格でしたね。“日本航空のジャンボ機以外は一切撮るな”と命令され、風景を撮ることさえ許されませんでした」

 成田空港も1978年の開港当初、世界一セキュリティーが厳しいといわれていた。

「成田闘争の影響で全国から機動隊が集められ、空港周辺を数10メートル置きに取り囲んでいました。取材パスを持っていても、簡単に撮影させてくれない。シャッターチャンスの瞬間はこっちも必死なので“ちょっと待って!”と抵抗しながら撮ってました」

 日本航空以外にも世界中のジャンボ機を撮り続けてきた。

「飛行機は空を飛ぶことへの憧れの結晶。人類の夢が詰まったジャンボ機に乗れることは進歩の証でもある。僕はその魅力を写真でいつまでも伝えていきたい」

 エンジン数がジャンボ機の半分で、燃費性能や運航コストが優る双発機の登場により、現在では製造中止も検討されているボーイング747。その勇姿を目に焼き付けておきたい。

撮影■青木勝(写真集『Hello, Goodbye』イカロス出版より)

※週刊ポスト2017年2月24日号

関連キーワード

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン