この仕事で困るのは、美容院や病院の看護師さんから、「職業は?」と聞かれて答えられないこと。だけど、そんなことは大したことじゃない。私がいちばんつらいのは子供たちが泣きながら電話をかけてくるとき。

 大きくなるにつれて、夫の新しい妻、つまり継母とうまくいかなくなってきたのです。そんなときに「もっとお金を貯めたい」と焦って仕事を増やすと、たちまちかつて人工透析直前まで悪くした腎臓が悲鳴を上げて入院。いつも爆弾を抱えながらの毎日でした。

◆医者になったらアメリカで暮らそうと娘に言われ…

 だけど悪いことばかりじゃありません。3年前、成績のよかった上の娘が、なんと医学部に合格したのです。母親の病気を見て育ち、「医者になりたい」と言っていたことは知っていたけど、まさか現実になるとは!

 アメリカの医学部の学費は、寮費などの生活費を入れると年間3万ドル。とっさに「わかった。学費はお母さんがなんとかする」と言った当時は、1ドル80円を割る円高。日本で稼いで送金すると、年240万円。昼も夜も、お店に待機して、1日5~8人の相手をして、翌年も娘の学費を納入しました。

 その直後、夫が「上の娘の親権を返す」と言ってきました。娘が「学費を払っているのはママなのに、パパが親権を持っているのはおかしい」と頑張ったみたい。

 その少し前のこと。子供たちは私がどんな仕事をしているのか、具体的に知ったようなのです。最近のデリヘルは、ブログをつけたり、ツイッターに書き込んで自ら集客をしなければ仕事になりません。

 私が別名を使って、ぼやけた写真でツイートしたことを子供たちが知っているんです。でもそれきり。おそらくママの仕事については何も言わないと決めたのだと思います。

 昨年、大学3年になった娘は学費も寮費も免除され、お小遣いまでつく奨学金が下りました。「医者になったらお母さんの面倒を見てあげる。アメリカで暮らそう」と言ってくれています。

 そうなるまで、もう少しだけ、この仕事で頑張りたいと思っています。

〈了〉

※女性セブン2017年3月2日号

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