気持ちが握手に出るトランプ大統領
経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、トランプ大統領の握手を分析。
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トランプ大統領の握手の仕方に注目が集まっている。大統領になって1か月、各国首脳との握手は、互いの主導権争いだけでなく、政治家同士の距離の近さも表していると言われるだけに、関心を集めるのも当然だ。
中でも、安倍首相との19秒にも渡る長い握手は有名になった。自分のペースに巻き込んだと言わんばかりに、力強く握りしめた手を何度も引っ張り、タップした。握手を終えた後の安倍首相のなんとも言われぬ表情と合わせて、その時の動画は話題になった。
ホワイトハウスに安倍首相を出迎えた時には、握手した手を握り直して自分の胸元にグッと引き寄せた。これは、大統領選でマイク・ペンス氏を副大統領に指名した時に見せた握手と同じである。ペンス副大統領は政治経験のないトランプ大統領と違い、政治的手腕や調整能力が評価されている政権のキーマンの一人。
「共に頑張っていこう。信用してやるから、うまくやってくれよ。そして裏切るなよ」という心の声が聞こえてきそうな握手ではないか。
そんなトランプ大統領の握手には握り方だけでなく、手の差し出し方にも特徴がある。カナダのトルドー首相との握手を見ると、その違いがよくわかる。
トルドー首相を出迎えたトランプ大統領は、右手をまっすぐ差し出した。イギリスのメイ首相、安倍首相と握手する際は、手の平を上に向けて差し出したのに、である。
手の平を上に向けて差し出すのは、相手の警戒を緩めさせるとともに、あなたと友好的に話したいという気持ちの表れだと言われている。
トルドー首相は、訪米前、難民受け入れを一時停止した大統領令に反する声明を出していた。あれだけ攻撃性の強いトランプ大統領が、トルドー首相にいい感情を持っていなかったとしても不思議ではない。
握手したトランプ大統領は、すかさず首相の右肩をがっちりと押さえこんだ。同時にトルドー首相がつかんだのは大統領の肩口。つかんだ親指がピンと立っていることから、かなり力が入っていることが見てとれる。だがこの握手、勝負はトランプ大統領にあった。
そのままの二人は、「トルネード」と表現された力比べのような握手を交わした。だが、トランプ大統領は首相の手をねじ伏せ、完全に手の平を下に向けた支配的な握手で終えたのだ。