2012年10月、フィンランドのテレビ局のインタビューを受けたハンソル氏は、そこで金正恩を〈独裁者〉と呼び、逆鱗に触れたと伝えられるが、韓国の情報機関・国家情報院関係者によれば、本当に“虎の尾”を踏んだのは「対南思想」と「将来の夢」を語ったシーンだとされる。

〈韓(朝鮮)半島を2つに分断しているのは政治的な問題に過ぎない。だから僕はどちらかの肩を持つということはしない〉

〈僕は(南北)統一を夢見ており、いつの日か北朝鮮に戻って人々の暮らしを楽にしたい〉

 金正恩はこの発言を「将来的には北に舞い戻って自分の地位に取って代わり、南北統一を果たす野心の表われと受け取った」(前出・国情院関係者)というのだ。

 ヨーロッパで教育を受け、民主主義的な価値観を持つハンソル氏に欧米各国は好意的な見方をしている。

 特に米国、中国、韓国にとってハンソル氏は、正男氏暗殺後の現在、対北カードで最大の切り札に浮上したという。北朝鮮問題に詳しい早稲田大学名誉教授の重村智計氏の指摘である。

「米トランプ政権にとって、核兵器や米本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を止めず挑発を繰り返す金正恩政権の体制転換こそ、自国の安全保障に繋がるとの考えが共有されつつある。

 中国と韓国にとっては、暴走を続ける北朝鮮が突然崩壊して、自国に大量の難民などが押し寄せる最悪の事態も避けたい。3か国にとって、ハンソル氏は大きな混乱を伴わずに、北の体制転換を可能にする有力な切り札と見られているのです」

 各国の思惑が交錯するなか、ハンソル氏の「身柄確保」をめぐって熾烈な駆け引きが繰り広げられているというのだ。

※週刊ポスト2017年3月10日号

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