国際情報

金ハンソル氏 米中韓の亡命政権に関われば生き残れる可能性

体制崩壊へのカウントダウンが始まるか

 北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄・金正男氏が2月13日、マレーシアクアラルンプール国際空港で暗殺され、マレーシア警察による捜査の進展に関心が寄せられる一方で、より大きな注目を集めているのが正男氏の長男である金ハンソル氏(21)の動向だ。

 今回の正男氏暗殺の背景にあるのは、昨年表面化した欧米各国に散らばる脱北者団体による亡命政権樹立の動きだという。『コリア・レポート』編集長の辺真一氏の解説だ。

「イギリスの脱北者団体関係者が最後に正男氏に接触したのが昨年6月。その際、正男氏は自分が亡命政権のトップに就くことを固辞したとされますが、この動きが正恩氏の耳に入り暗殺のタイムスケジュールが早まったとも言われています」

 ヨーロッパで教育を受け、民主主義的な価値観を持つハンソル氏に欧米各国は好意的な見方をしている。特に米国、中国、韓国にとってハンソル氏は、正男氏暗殺後の現在、対北カードで最大の切り札に浮上したという。

 だが、新政権発足間もない米国、政治的混乱で身動きが取れない韓国を尻目に今、最も積極的に動いているのは中国だという。辺氏が続ける。

「トランプ政権の誕生で、中国は米国との関係構築に大きな不安を抱いている。互いの利益が一致する北朝鮮のゆるやかで安全な体制転換に向け、ハンソル氏を自国で保護し続けることで対米関係改善のカードとしても利用できる。北朝鮮からの石炭輸入停止はその布石であり、米国に向けたシグナルです」

 では、肝心のハンソル氏はどう動くのか。ハンソル氏が今後、“復讐”に出る可能性を指摘するのは、北朝鮮問題に詳しい早稲田大学名誉教授の重村智計氏である。

「ハンソル氏がこれから生涯にわたって金正恩から命を狙われる立場になったのは確かです。ならば米中韓のいずれかに亡命して、亡命政権樹立に自ら関わったほうが生き残れる可能性は高い。さらに亡命政権のトップに立って、北朝鮮の現体制を転換させる運動の先頭に立つことで父親の無念を晴らす機会も得られる。

 聡明な若者ですから、そう判断する可能性は十分にあります。正男氏の暗殺によって、ハンソル氏が表舞台に立つ機会を得たことは皮肉な結果というしかありません。21歳の青年の行動次第で、体制崩壊のスピードが早まるかもしれないのですから」

 金正恩の放った毒は、自らに回り始めたのか。

※週刊ポスト2017年3月10日号

関連記事

トピックス

不倫報道のあった永野芽郁
《田中圭との不倫疑惑》永野芽郁のCMが「JCB」公式サイトから姿を消した! スポンサーが懸念する“信頼性への影響”
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎ストーカー殺人事件》「テーブルに10万円置いていきます」白井秀征容疑者を育んだ“いびつな親子関係”と目撃された“異様な執着心”「バイト先の男性客にもヤキモチ」
NEWSポストセブン
騒然とする改札付近と逮捕された戸田佳孝容疑者(時事通信)
《凄惨な現場写真》「電車ドア前から階段まで血溜まりが…」「ホームには中華包丁」東大前切り付け事件の“緊迫の現場”を目撃者が証言
NEWSポストセブン
2013年の教皇選挙のために礼拝堂に集まった枢機卿(Getty Images)
「下馬評の高い枢機卿ほど選ばれない」教皇選挙“コンクラーベ”過去には人気者の足をすくうスキャンダルが続々、進歩派・リベラル派と保守派の対立図式も
週刊ポスト
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《スクショがない…》田中圭と永野芽郁、不倫の“決定的証拠”となるはずのLINE画像が公開されない理由
NEWSポストセブン
小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
食物繊維を生かし、健全な腸内環境を保つためには、“とある菌”の存在が必要不可欠であることが明らかになった──
アボカド、ゴボウ、キウイと「◯◯」 “腸活博士”に話を聞いた記者がどっさり買い込んだ理由は…?《食物繊維摂取基準が上がった深いワケ》
NEWSポストセブン
千葉県成田市のアパートの1室から遺体で見つかったブラジル国籍のボルジェス・シウヴァ・アマンダさん、遺体が発見されたアパート(右・instagram)
〈正直な心を大切にする日本人は素晴らしい〉“日本愛”をSNS投稿したブラジル人女性研究者が遺体で発見、遺族が吐露した深い悲しみ「勉強熱心で賢く、素晴らしい女の子」【千葉県・成田市】
NEWSポストセブン
遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン