国内

「自由意思による退位認めれば皇位継承不安定に」説は誤り

即位礼正殿の儀(1990年11月) 共同通信社

 有識者会議の議論を見ても天皇陛下の譲位に対する反対論は根強い。だが『天皇「生前退位」の真実』など著書もある神道学者の高森明勅氏は反対論者のロジックは前提から間違っていると指摘する。

 * * *
 昨年8月8日、天皇陛下は「譲位」を望むお気持ちを強く滲ませたお言葉を、ビデオメッセージという異例の形式でご公表になった。「国民統合の象徴」である天皇には、その役割にふさわしい“務め”がある。高齢による衰えでそれを十全に果たせなくなったら、国民のために天皇の地位を後継者(皇嗣)に譲るべきだというお考えを、誰にもわかるように示唆されたのだ。

 ところが知識人の一部に陛下のご譲位そのものに公然と反対する者がいる。「陛下の自由意思による退位を認めたら、皇嗣が即位を辞退する自由も認めねばならず、皇位の継承が不安定になる」というロジックだ。

 しかし、天皇のご意向“だけ”で退位を可能にするルールは誰も想定していない。皇室典範に根拠をもち、皇族の代表や三権の長らで構成される皇室会議での議決を不可欠の要件とすることになろう。従って、そうしたロジックは前提から成り立たない。

 しかも今の制度のままでも、即位辞退の「自由」は事実上、すでにある。もし皇嗣が即位を固辞して、あらゆる国事行為を自ら行わない姿勢を貫かれたらどうなるか。立法・司法・行政、内政・外交すべての国家の中枢的活動がたちまちマヒしてしまう。当然、経済にも巨大な悪影響がおよぶことになろう。そうした事態が予想されるケースでは、皇室典範第3条を適用する以外にない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン