ライフ

延命治療中止で裁かれた医師はなぜ患者のチューブを抜いた?

いまなお現場に立つ須田セツ子医師

 欧米で安楽死容認の動きが広がりつつあるいま、日本でも「安らかに、楽に死にたい」という意見を目にする機会が増えている。“どう生きるか”と表裏一体である“どう死ぬか”という問題に大きな関心が集まっているのだ。

 超高齢社会の日本で「無駄に思える延命治療はいらない」という声が出てくるのも自然なことだろう。ただ、そうした“選択”はこの国でどこまで可能なのか。かつて、患者のチューブを抜いて罪に問われた医師の言葉は重い──。

 15年前、48歳だった逮捕当時の写真と比べると、須田セツ子医師は少しやせ細った印象だった。記者が事件当時と気持ちの変化があるかを尋ねると、表情をほとんど変えずに、「あまりないですね」とポツリと呟いた(以下、「」内は須田医師)。

 1998年11月、川崎協同病院で呼吸器内科部長(当時)を務めていた須田医師は、気管支喘息の重積発作で心肺停止状態になった患者から、気道を確保するための気管内チューブを外した。すると、患者が上体をのけぞらせて苦しみだしたため、鎮静剤と筋弛緩剤を投与したところ、患者は息を引き取った。

 事件化したのは、それから3年後の2001年のことだった。同病院の麻酔科医の内部告発により発覚し、遺族が“抜管に関して家族の同意はなかった”と訴えたのである。新聞紙上に連日、〈安楽死事件〉の見出しが躍った。

 裁判で争点となったのは、(1)家族の同意の有無と、(2)筋弛緩剤投与の方法と量である。2007年2月の東京高裁判決では、(1)抜管に家族の承諾があったことを認定したが、(2)殺意をもった筋弛緩剤投与だったとし、懲役1年6か月、執行猶予3年の判決を下した。2009年12月に最高裁が上告を棄却したことで、殺人罪が確定した。

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン