◆「誰かがやらねばならないこと」
構内の敷地に入ると、等間隔で並ぶ巨大な円形タンク群に遭遇する。1基の高さは10mほど、直径は約12mだという。高濃度汚染水は多核種除去設備(ALPS)などを用いて、トリチウムを除く62核種が除去される。その浄化後の水を保管するタンクは現在、敷地内に約900基あり、少なくとも2020年までは保管可能な計画が立てられているという。
その中心的な役割を担う大成建設の竹内良平・工事長(47)は、東日本大震災直後に自ら志願し、現在までの約6年間、1Fでの作業に従事している。
「私が行なっているのは、貯水タンクのリプレイス(交換)作業です。事故発生当初は迅速さが最優先されたので、組み立て型のタンク(容量1000トン)を使用しましたが、現場の状況が安定した現在では、より信頼性が高く、倍以上の容量(最大2400トン)を持つ溶接式タンクに切り替えています」
竹内工事長が担う作業は、巨大なタンクを支える基礎建設だ。鉄筋を組み、そこにコンクリートを流し込む。
「タンクの基礎部分は周囲をかさ上げして堤(堤防)を作っています。溶接式タンクに切り替える際に、さらに高い堤に変更しました」(竹内工事長)
過去に組み立て型のタンクから水漏れが起きたことを問題視する報道もあったが、こうした対策により、漏れた水が海や土壌に流れ出すことはないという。タンクの水漏れなど起きてはならないという前提の上で、万が一の事態にも備える。こうした二重、三重の安全性の追求は、想定外の事態に対応できなかった原発事故から得た、貴重な教訓といえよう。
竹内工事長は1Fから南に20kmほどの広野町で単身赴任中だ。埼玉県内の自宅には妻と3人の子供が暮らしている。
「埼玉に戻るのは月に1度くらい。寂しい気持ちもありますが、それでもこの作業は“誰かがやらねばならないこと”だと思っています」