続いて向かったのは1号機から4号機までを見渡す高台だ。建屋までは直線距離で約80m、放射線量は毎時0.160ミリシーベルトを示した。除染や瓦礫の撤去等の進捗により、1年前と比べて半分程度の線量に低下したという。
しかし、現在も建屋付近での作業では重装備が必要になる。眼下では、顔の半分を覆う半面マスクに防護服を着た作業員が動き回っている。まさに廃炉作業の「最前線」であるが、建屋の周辺からはほとんどの瓦礫が撤去されているために、整然と作業が行なわれている様子が窺えた。
「これまでの6年間は、作業環境改善や汚染水対策等、言わば本来の廃炉事業に取り掛かるための準備期間でした。それにようやく目処がつき、今年からは使用済み燃料や燃料デブリの取り出しに向けて、廃炉の核心に迫る作業や調査に取り掛かる段階を迎えます」(東京電力廃炉推進カンパニー広報部・広瀬大輔課長)
だが、それはこれから始まる作業が楽観できるという意味ではない。最も困難と見られているのは、1号機から3号機に残る燃料デブリの取り出しだ(4号機は2014年12月に完了)。東京電力の計画では、2018年度中に初号機の燃料デブリ取り出し方法を確定する方針とされている。
去る2月には、2号機の格納容器内に自走式の調査ロボットが投入され、事故後初めて2号機格納容器内部の状況を映像で捉えた。東京電力は今後、撮影画像や放射線量、温度などのデータ解析を進めるとしており、進捗を注視していく必要があるだろう。
※週刊ポスト2017年3月17日号