日本で開催されるキャットショーは日本人ジャッジが多くを占める。まだ珍しい猫種だったラパーマは、参加当初、なかなか高得点を取ることができなかった。ジャッジでさえ、初めて見る人が多く、判断のしようがなかったのだ。
だが、転機が訪れた。年に一度、CFA日本支部が主催する大きなショーがある。2013年のそのショーには普段より多くの猫が集まった。世界中のキャッテリーが信頼するカリスマジャッジ、ウエイン・ハーディング氏が来日していたためだ。そのハーディング氏が、ねねを見てこう言った。
「こんなに素晴らしいラパーマを初めて見ました。アメリカでも見たことがない。非常に感動しています」
ラパーマの本場、アメリカのジャッジ達はみな、ねねが最終審査に進むにふさわしいと判断した。全57の猫種の中で参加頭数ほぼ最下位のラパーマ、さらにノンタイトルのねねが、カリスマジャッジの絶賛を得て、キャットショー上位常連とともに並ぶ。日本のラパーマが世界から認められた瞬間だった。
このショーを皮切りに、増田さんたちの育てたラパーマから「世界チャンピオン」の称号を持つ猫が続々誕生している。
「これは、私にとってビジネスではありません。猫を愛する人、よく知る人に“おおっ”と思ってもらえるような――CFAが言うところの“芸術作品”をこの世に生み出したい。美しく、賢く、健康な、私にしかできない猫を育てたかった。それだけなんです」(増田さん)
猫への深い愛情と日々の細やかなケアを惜しまない増田さんの願いはひとつ、日本生まれのラパーマ、この美しい猫の存在を世界中の人に伝えたいということだ。
撮影■五十川満