炎上中の書籍ももちろん置かれていた
元谷とその妻芙美子(アパホテル社長)の経営姿勢は、「逆張りの発想」。バブル時代に本業以外の投機に走らず、地道に世の趨勢と逆を行ったがゆえに、バブル崩壊の痛手から逃れた。そういえば米大統領トランプの父も、世界恐慌時代に低所得者向けの廉価な不動産事業を展開するという「逆張り」方式で不況期に財を成した。元谷夫妻とトランプ。不動産から出発して右派思想を開陳する、という点においても実に相似的だ。
金沢駅からほど近い同市片町にひっそりと佇むのは「アパホテル金沢片町(旧金沢ファーストホテル)」。あまり知られていないが、ここがアパホテルの一号館である。駐車場のある片隅には「定礎・1984年12月元谷外志雄」とあった。アパの源流に触れた思いだ。
ここまでくると泊まらないわけにはいかない。一泊の料金は驚くなかれ3900円(WEB予約)。施設の外観は建造当時を保ち、内装もお世辞にも最新鋭とは言えないが、ビジネスホテルとして必要十分な気配りは行き届いている。この値段なら☆5つで相違あるまい。室内には定番の折り鶴が。「おもてなし」の心を示すために、元谷の妻・芙美子が始めたサービスという。
翌日、金沢市から南に30kmにある小松市に向かった。すでに述べた通り、アパの前身「信開」は1971年にこの地で創業している。「信開」は1997年に現在の「アパ」に商号を変更しているが、信開発祥の地・小松には現在も「アパホテル小松」「アパホテル小松グランド」の2館が営業する。
特に「小松グランド」は上記『成功企業の仕事術』によると日本で初めて自動チェックイン機を導入した館。壁面鏡を使ってロビーを広く見せる工夫が施されており、この価格帯のビジネスホテルにしては重厚感が満載である。